第5話◯現状把握に努めましょう
またしても、謎の声が聞こえてきた。
相変わらず意味不明の単語ばっか並べているもので、内容はよくわからない。
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個体名:ーーー
種族名:スケルトン
位階:
存在値:220
[能力]
生命力:250/250
魔力 :15/15
攻撃力:30
防御力:30
抵抗力:20
敏捷力:10
[称号]
[スキル]
【META】【密化】
[特性]
【骨の身体】【アンデッド】
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……だが、その声が響いた直後、視界の端に青いウィンドウのようなものが映し出された。
大きさにして、小さめのノートパソコンの画面くらい。
背景が透過していて、向こうの風景が見える。
まぁ、その画面自体の特徴はどうでもよくて…。
重大なのはこの現象とそれに書かれていることだ。
えっと、これは…なんというか。
ステータス…ってことだろうか。
数字と文字の羅列。
攻撃力とか魔力とか…、なんともファンタジックでゲームチックな項目が並んでいる。
とても馴染み深いね。
若い頃は帰って即ゲームするようなガキだったから、懐かしさと妙な感動を覚えている。
…でも、ソレは現実に存在するはずがない。
自分の能力、技能を表示してくれる親切設計があるわけない。
え、これやっぱ夢かな。
でも一向に目が覚める気配がないんだよな。
頭蹴り飛ばされたら、夢だとしてもショックで目覚めるだろうし。
俺は悪夢を見るとすぐ起きちゃうタイプなんだ。
じゃあ、死後の世界…?
骨が彷徨っているから、可能性としては高い…か?
でもなぁ、死後の世界にステータス的なモノがあるのってどうなんだ。
それに骨の姿て……、そういう場所って死装束に三角頭巾のコーデが相場じゃないのか。
……となると、残る可能性は異世界に転生した、とか?
どっちもどっちで大それている気がするけど、スキルとかステータスという文言は異世界の方にイメージがある。
骨及び死体に転生というのは変な感じがするけど…。
……まぁ、この際どちらでもいい。
このような状況に陥った経緯がどうであれ、元に戻るという可能性は薄いのだ。
ならばウダウダ詮索せずに、甘んじて受け入れる方が得策な気がする。
よし、現状に目を向けよう。
せっかく《ステータス》という情報があるのだから、それを確認すべきだ。
まずは未知の単語について触れようか。
といっても、どう調べればいいのかはわからない。
疑問に思ったことを教えてくれる親切設計が、この世界にはあるのだろうか。
〜〜〜〜〜【位階】〜〜〜〜〜
この世界における、生物としての格。
その中でも高い順から
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あったわ。親切な機能あったわ。
その単語──今回ならば【位階】という部分に対して意識を集中させると、新たなウィンドウが開かれて、詳細が表示された。
なんて初心者に優しい世界なんだろう。
……んでそれによると、この世界では個々に格付けされるのか…。
なんて世知辛い世界なんだろう……。
というか俺、
いきなり下等生物なんて言われたら涙を禁じ得ない。
この位階って覆せないのだろうか…。
とりあえず、もうひとつのワード【存在値】に意識を向けてみる。
すると先程同様、ウィンドウが位階の説明文に重なって開かれた。
〜〜〜〜〜【存在値】〜〜〜〜〜
この世界における存在の大きさを数値化したもの。
他生物の殺害を始め、
この世界に対して影響を与えることで増加する。
大きさに応じて様々な補正や追加特性を得られる。
一定地に達すると《位階の上昇》や《存在進化》が可能になる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
下等生物決定で、悲しみに暮れていたけどまさかの朗報。
どうやら位階は上げることができるらしい。
そういえば、さっきの声も存在値がどうたら、位階の上昇がなんやらと言ってたな。
意味わからなくて聞き流してたけど…、ソレが正しいならば俺も今すぐ最底辺から脱出することができるのでは?
現在の俺の《存在値》は220。
これがどれくらい大きいのかわからんが、少なくとも位階上昇するに値はしているらしい。
ならば、さっそくやってみるか。
『位階の上昇を行いますか?完了までに時間を要します。その間意識はシャットダウンされます』
[推定:20.52秒]
決意すると、脳裏に例の声が響く。
と同時に全てのウィンドウが閉じ、その後タイマーのような画面が現れた。
…どうやら位階の上昇には時間を要するらしい。
それに意識が飛んでしまうと……。
つまり、完全な無防備状態になるということか。
20秒程度なら少しくらい……、とは思うけど、さっきの襲撃があったからなぁ。
いつヤられるかわかったもんじゃない。
周囲からは何も気配は感じられないけど、俺は戦闘民族じゃないから誰かが潜んでいるのを知覚できていないだけなのかもしれないし…。
う〜む。
……まぁ、心配しすぎるのもダメだよな。
何処か安全な場所があるかと言われれば、無さそうだ。
辺りは開けた墓地、身を隠せるような場所は存在しない。
先延ばししたところで、大してリスクは変わらない気がする。
それに、首と体が分離しても生きられる(死んでるが)のだ。
先ほどのスケルトンみたいに、砕かれでもしなければ大丈夫…なはず。
よし。
位階の上昇をするか……、答えはYESだ。
『位階の上昇を開始します』
「す」を聞き終わるか終わらぬかというところで、俺の意識はぷっつりと途切れた。
〜〜〜〜〜〜〜【META-LOG(非通知)】〜〜〜〜〜〜〜
……………
▼ユーザーの意思を確認しました。
▼【位階】の上昇を開始します。
……………
▼【位階】の上昇が完了しました。
【劣伍位】から【劣肆位】に昇格しました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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