5 小さな希望に全霊を尽くす
だけど、父は生き続けたよ。
彼女の裂かれ、行方知れずになった身体を探して、綺麗にして弔おうとしたとき。
見つけてしまったから。
五か月にも満たない未熟な胎児だった、俺の存在を。
生きていることを知った。自分とシルヴィアとの子が生きていると。
持ちうる魔導技術を駆使して、父は俺を死んだシルヴィアの胎の中で育て続けた。
ああ、意味が分からないだろうな。
父の使う、現代では失われた魔法の仕組みについては、記憶を継いだ俺もよく分からなかったさ。
分かるのは、俺は死者から生まれたも同然という事。お前のいうとおり、創世の英雄と災厄の魔女、双方の血を引くこと。
生者と死者。
創世の英雄と災厄の魔女。
鬼王と魔王。
互いに相反し、はたまた殺しあったものたちとの間にできたもの。
それが俺さ。……うん?ああ、ちょっと違う。
俺が両親から受け継いで使えるのは、剣術くらいだよ。
リュシカの力もおそらく受け継いでいるだろうが、混血児じゃあ身体が耐えられないから使えない。
……思い出したか。
あの時、無理に力を引き出した代償が、俺に刻まれた身体中の傷さ。俺はいわゆるクォーターだから、もっと脆いって訳さ。
この程度で済んだのは、お前の助力もあったんだよ。
良いんだよ。命つなげたんだから。
父さんが守った命を潰さずに済んだ。感謝している。
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