3 暴君というのもおぞましい

リューマの実父か?

ああ、父親そっくりだと何故母に会えないかも気になるか。

リューマの実父はな。どうしようもないくそ野郎だ。


魔女リュシカやその子供、彼女の苦痛を祓おうとした創世の英雄の子孫を虐げていた、鬼人族の王。

そうだ。コトリノ王とも呼ばれる外道。

魔王と似た容姿なのが本当に悔やまれる。

あのイカレと、あの優しい魔王が双子なのは何の因果なんだろうな。


あいつは。

我が子のことで絶望する女の嘆きが。

愉快で愉快でたまらないくそったれなんだ。


自分の妻が呪いに苛まれ続ける様に快楽を覚えた。

呪いを引き込んだリュシカの自業自得とはいえ、伴侶を苦しめていい道理はない。

だから、俺の父も絶望し、母親との再会をあきらめた。

人間体の皮を被っているとはいえ、容姿があの糞コトリノ王と酷似し過ぎていたから、既視感を抱かせて傷つけることが怖かったんだよ、父さんは。

リュシカはコトリノ王を、この世界で最も憎んでいたから、当然だろう。


災厄の魔女リュシカと鬼王の落胤は、リューマの後もたくさんいる。

……忘れんぼな哀れな魔女に、あの男はどんな仮面を張り付けて愛を育んだのだろうなあ。

ああ? ……お前にもいつか分かるさ。

恋だ?だから、そんなものじゃない。

呪いで苦しむ妻に、素知らぬ顔で愛を囁く男だ。初子への悔恨の念なんぞあったものじゃあない。恋だの愛だの、そんなものが生易しいわけがないだろう。

……と、ここまでは話半分に聞いておけ。

父は実の母であるリュシカに拒絶されたこと、何より実母の魔女狩りに参加したことで、数百年以上人間不信になっていた。

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