たった一つ、手のひらに残ったもの。

生きる意味を探していた。


私には何もなかった。

目標も。夢も。希望も。感情も。


子供の頃に持っていたたくさんのそれらは、大人になった私の手のひらには、何一つ残ってはいなかった。


私がいなくたって世界は廻る。


世界は、私を必要としなかった。

誰もが、私を必要としなかった。


私が生きる意味なんて、この世界には無かった。


何もない手のひらに、ぽつり、と雫が落ちる。


「誰かに必要とされたかった。

 ここに居ていいよと言って欲しかった。

 生きる意味を、与えて欲しかった。」


ぽたりぽたりと手のひらに溢れる雫を眺めながら、私は呟いた。


失くしていたと思っていたものがたった一つ、そこにはあった。

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