目前の賄賂

かつて数十分前に存在したキーア砦は何者かの手によって爆破された。

廃墟と化したキーア砦から高位の魔道服を着た魔術師が颯爽と逃げる所を目撃した、怪しく感じたティアナは背後から近づき捕縛した。



廃墟


無関係を主張する魔術師、原困を探るために現場に向かった。

ティアナは金髪の若者と押し問答繰り返すドースに話しかけた。


「ドース何が起きたの?」

重量が感じられない漆黒の全身鎧からは若い娘の声が聞こえる。

「今それを調べるところです」

ドースは目の前にいる金髪の青年の忠告を無視して力づくで立ち入ろうとしている。


両腕に力を込めて勢いよく前に繰り出し押しのけようとするドースに対して、レイも両腕で押し返そうとしている。


「いい加減にしたらどうだ小僧!」

「無理です!」

両者は一歩も譲らない。


「まぁまぁ双方落ち着いて」



繰り返し押し合うだけの戦いにティアナは平和的に事態を解決するため従者に片目を瞬きして合図をした。重みがある袋を彼女の従者が取り出した。


その袋を従者は相手に渡そうとするが受け取ることをレイは拒否した。


「ふーん・・」


「命令に逆らったら殺される、通すことは出来ない」

青年は冷静に拒否した。

そもそも休暇や私的な時間が許されたことがない青年にとって賄賂に魅力を感じなかった。



ティアナは珍しいと感じた、命令をした人物がいるわけでもないのに断るなんてよっぽどダルメキアの兵士は法に従順らしい。金があれば多少の違法行為を許すメレル都市が懐かしくなった。


ならば青年に命令した人物に交渉しようとティアナは考えた。


「なら命令した相手はどこにいるのか教えなさい、それなら大丈夫でしょ」


その時、ティアナの腕に挟まれ身動き出来ないメールは自分が第三者であるかのように振る舞いレイが喋らないように釘を刺した。


「私はここに何の関係もないけど言わない方が良いわよ!」

「関係ない人間がそんなこと言うの?」

ティアナは腕に力を込めた、メールは必死に無関係と主張し続けた。


ドースは目の前の青年にばかり気を取られて気づかないでいたが、ティアナお嬢様の周りに知らない人物がいること初めて認識した。


「お嬢様、そのお方は?」

「怪しいから捕まえたの」

ドースは驚愕した。

「ダルメキアの人間を証拠もなく捕縛したら外交問題になりかねませんぞ」

「これから見つけるの」

ティアナは大した問題ではないかのように言った。

お嬢様が何か問題をここでも起こしたら困るとドースは感じられずにはいられなかった。





遠くから複数の馬蹄が地面を蹴る音が聞こえた。

馬蹄が蹴る音は徐々に大きくなりこちらに近づいてくることが分かった。


全身鎧を着こんだティアナは疲れた様子も見せないまま片腕でメールを掴んでいる。

メールは馬蹄の音が聞こえてから、今まで以上に抜け出そうと必死に動く。

それと同時にティアナは彼女があの爆破について関係があると確信を深めていった。


(あの時のお菓子、その恨みを思い知るがいいわ)

爆破でお菓子を吹き飛ばした犯人に裁きを下せると思うとティアナは嬉しくて心が躍るように感じた。

















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