骸骨兵

廃墟


廃墟を解体する骸骨兵をよそに拘束された廃墟の作成者は逃げ出そうと必死にもがいていた。事件の根本であると確信したティアナは容赦なく腕を締め付けたまま自軍の総大将である老人に同僚であるかのように話しかけている。


老人のドースは高い実力で総大将になっているがメレル都市内では裁判官と同等の権力しかない、戦場に常に赴いていた為に内部の権力闘争に関わらなかったためである。そして現在はメレル都市の派閥とは無縁の戦闘などに駆り出されている。


そのため軍の総大将であるドースより高位の階級にいる彼女は周囲の貴族などの問題を避けるためにドースを同格者として扱っている。







廃墟:十分前



煙を吹き出す廃墟の前に立ちはだかる女性から逃げようとしたレイだったが、海から突如伸びてきた骨の手に足を掴まれ硬直してしまう。


「あっすいません」

どこから発しているか分からない低い声には生気が感じられなかった。

「あれ?」

「怪我でもしましたか?」

レイは骸骨の頭にある窪み見つめていた。初めて動く骸骨を見たレイは衝撃が脳を渦巻き、ありとあらゆる考えを浮かべながらどう対処するべきか考えていた。


「ん?あれ、あいつなんでこんな所に?」


背後からその声が聞こえた瞬間、まさしく世界が凍ったかのような感覚に包まれた。彼にとってこの声は過去のラキードとあの時の手術を彷彿とさせる恐ろしいものだ。


レイは機嫌を損ねないように手短にここにいるわけを話した。

口調は普段よりも早かった。


「そう・・あっ!」

レイの話を話半分に聞き流したメールは突如閃いた顔で彼に言い放った。

「今すぐ砦の部隊をまとめてあの廃墟を片付けなさい、そして訳を聞かれても事故だと言って追い出しなさい!」


「部隊ですか?」

表情には出さないが困惑した、あの爆発で生存者がいるとは思えないし、いたとしても負傷しているだろうと思ったからである。

「そうよ、ほら足元にいるじゃない」


足元を見ると骸骨が海面から覗いていた。

「どうも」

その骸骨はとても低い声でしゃべる


「え?」

「じゃあ後は任せるわ」

「え!?その!」

驚き戸惑う声を無視したまま足早に彼女は去った。


「えぇぇ、」

レイは戸惑ったが命令に従うことにした、どの道それ以外に道はないからだ。




ひとまずこちらを見つめる骸骨に陸に揚がるように命じた。

一体の骸骨が姿を見せた後に数百体もの骸骨が続けざまに陸地に揚がった。


死者が動く風景に違和感を感じたが、貴族の養子になった間も世間のことについては疎かったレイはこれが普通なのだろうと判断した。


全ての骸骨が陸地に揚がると黒いフードを身に着けた骸骨がゆっくりとレイに近づいた。

「あなたはバルク様の養子であらせられるレイ様でございますか?」

「・・その通りだ」

骸骨からは他の骸骨と同様に低い声だった。


「早速で申し訳ないがあの廃墟を片付けてほしい」

「心得ました」

フードを身につけた骸骨が腕を天に挙げると他の骸骨が乾いた音を出して頷いた。


骸骨達は廃墟に向かった。

廃墟を片付ける景色を眺めていると声が聞こえた。

「あれは竜牙兵か?だが見た目が貧弱じゃのう」。

後ろの方から老人の声が聞こえた。







前の章に続く。









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