奴隷都市メレル


市場の中心地点にある第三砦にはプーゲ半島から南に位置するメレル都市から派遣された軍勢が駐屯している。


メレル都市は1割にも満たない都市貴族と残りの9割が魔術で支配された奴隷達で構成されている為、指揮官などの公務を人口の少ない都市貴族が男女を問わず担っている。


そしてメレル都市とアティミカは険悪な関係であるがエルフの帝国アティミカはメレル都市周辺にアティミカとは親戚関係のエルフの国が支配している為、手を出せないでいた。そしてメレル都市の支配者キスィア大公国はメレル都市に派兵を政治的な八つ当たりでよく命ずるため、関係の悪化の根幹はキスィア大公国にある。




第三砦

メレル都市派遣軍1万を率いる歴戦の老将、ドース メレルは鏡のように反射する頭頂部と顔にしわが目立つ立派な老人である。年を取った彼は杖をついて歩いているが戦場にいる、なぜならメレル都市は随一の戦功者である彼を指揮官として頼りにしているからである。



今さっき起きた爆発を視認したドースは杖より前にゆっくりと(老人にしては早い)足を出しながら向かった。


廃墟


現場は白い煙を微かに吐き出す廃墟で溢れていた。

「誰かおらんか!」

返事は聞こえない。

「むむむ、一体何がどうなっているのじゃ」

辺りを見回す内に微かな物音が聞こえた、どうやら近くに誰かいるようだ。


廃墟の裏手に回るとそこには廃材を片付ける骸骨兵とその指揮官らしき人物が見えた。

「竜牙兵か?だが見た目が貧弱じゃのう」

疲れた顔をした若い金髪の指揮官がこちらに気づき、老将に近づき騎士の礼儀に則った挨拶をした後に腰を低くさせたまま老将に立ち去るように求めた。


「すまぬが儂はこの国に派遣された総大将として知らぬ訳にはいかんのだ」

「ほんの些細な事故ですから、ご安心ください」

若者は道を譲らない。

「些細な事故でこうなるものか!ならばなおの事、調べにいかねば!」

老人は下がらない。


骸骨兵は廃墟の解体を進めていた、その時上から、バキッと木材が割れる音が響いた。


若い指揮官と老将は落下してくる木材を恐れて兜を装着した。

若い指揮官の兜は曲がった角が天を指す兜は身長が実際よりも高くあるように錯覚させた。老将は簡易的に被っただけの使い古された鉄兜だが、簡易なその服装は歴戦の威風を漂わせた。



背後から声が聞こえる。



元キーア要塞跡地



「離しなさい!」

「嫌」

爆発地点から市場にはない高価な魔道服を身につけた茶髪の女性を従者に拘束させながら、爆発した現場に向かっていた。

「私は無関係よ!」

「アティミカの魔道服を着ている癖に無関係なわけがないわ」

「拾ったものよ!」

「そんなわけないでしょ!」


現場に着くと大量の骸骨兵が廃墟を解体していた。

そこには鎧を身に着けた騎士と対峙しているドースが見えた


「ドース!」

「ティアナお嬢様!?」

「この骸骨はあなたの友人かしら?」

「冗談はよしてください」






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