爆発的な市場
外海の玄関口であるキーア港はしばしば外海の国々との貿易と外交の場とした港湾都市キーアはプーゲ半島で随一の経済力を持つ。
そして過去にエルフがプーゲを統治する際には主にキーアに滞在したため、エルフは屋敷を守るために屋敷ごとに石垣の砦を建設した。
そのため乱雑に建てられた砦の間に港によって発展した市場が造られた。
市場は様々な色をした布が惜しみなく使われており、その市場に通う人々も彩られている。因みに布は一枚で労働者を一週間雇える程の値段である。
キーア港:第三砦
「なにかお菓子は見つかった?」
深紅の髪を潮風で揺らして、声には合わない漆黒の全身鎧と普通なら視界を確保できない角兜を纏った娘は、初めて見る国で必要なものを従者に調査させていた。
「はい!ここにございます」
従者が取り出した紙袋から甘い香りが辺りを漂よった。
「これはパン?」
一般的なものより大きく丸々とした白いパンからは甘美な匂いがした。
「甘くて美味しいですよ」
「そうなの?」
「はい!ラドルク家のティアナ様に仕える従者のミアが保証します!」
見慣れないパンを片手で持ち、もう片方の手で兜を少し上に押し上げた隙間からパンを口の中に運んだ。
やわらかい触感と甘い果物とクリームが口の中で弾けた。
「ミア残りは寝室の棚に入れて、あと誰にも言わないように」
「はい!分かりました」
キーアに吹く潮風が人々をそっと撫でる
するとキーア港の海上にそびえ立つ砦が一瞬眩い光を放ったと認識した次の瞬間、爆風が潮風に大胆に逆らい、付近の建物と人を押し倒した。
爆発地点から離れた砦には爆風が吹き、雷のような音が聞こえた。
「あ・・・」
「・・エルフか?」
「あ・・あぁ・・・」
「ミア、どこか怪我でもしたの?」
「その・・落としちゃいました・・・」
従者は子犬のように震えていた。
「申し訳ございません!!どうか家族には何卒!何卒ご慈悲を!」
「私を姉上と一緒にしないで」
「申し訳ございません!」
街道
馬車で目的地に向かったその日、目的地が爆発した。
まるであの時に戻ったかのように感じながら目的地に向かった。
キーア港には砦がいくつも建てられており中には海上に建てられた砦もある。
そして僕が・・いや自分が(メール様にもっと硬い口調にしろと言われた)むかう場所は海上にあるらしい、恐らく秘匿したい理由があるのだろう。
キーア砦跡
砦は煙が立ちこむ廃墟になっていた。
どうしてこんなことに、前にいた人物に何か知らないか聞こうとしたが。
「やりすぎたかも・・」
声から察した、メール様だ。
離れておこう、嫌な思い出が蘇ってくる前に。
足をそっと下げたその時、足首を掴まれた。
石のように硬い手に掴まれた足首を見てみると骨が見えた。
「あっすいません」
海面から聞えた声をそっと振り向くと骸骨がいた。
人とは言い難いと言われた自分にもお迎えがくると感じることができて、安心した。
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