最初の喧嘩庭園

庭園


多種多様な花々が咲き誇っている庭園には、剣を振って日が浅い従騎士達が修行していた。するとこの庭園の所有者である騎士が腕に魔導具を取り付けられている少年を連れてきた。


「バルク様その少年は?」

若い従騎士達は剣を鞘に納めて、主である騎士に問いかけた。

「儂の養子だ、こいつに例の部隊を指揮させることにした」

「えっ!?」

驚きと同時に少年に敵意が向けられた。


「どうしてですか!」

「強いものが養子になると言ったではありませんか!!」

「戦わせてください!戦場に行くべきは誰か教えてやります!」


「ふむ、では息子よ相手をしてみてくれ、」

「はい」

その場を養子に任せて、庭園の奥に向かった。

主の姿が見えなくなった従騎士達は少年を取り囲んだ。


「俺から相手をしてやる」

「分かった」

互いに剣を構えた。

自分より小さい相手なら重量で押し込んでしまおうと考えた従騎士は体重と勢いを剣に乗せた一撃を放った。


その一撃を少年は受けないように、剣が振りかぶられる直前に前方に向かって体当たりした。自分より小さい標的が体当たりすることを阻止しようと、目線を地面に向けて上半身を前に出す格好になった。


上半身を前に出した状態で下半身から体当たりされたことにより、ほどなくして従騎士はバランスを崩し倒れた。


「痛ったぁ!?」

倒れた背中を剣で軽くつっついた後に少年は鞘に剣を収めた。

実戦なら勝てる様を見せれば満足すると考えたからだ。


「舐めやがって!」

しかし、日ごろ剣を交える修行を行う彼らにとって、剣をほとんど使わない試合は最大級の侮辱として受け止められた。




庭園


前の戦いから4週間後、同じ場所で生まれた同僚達の行方は未だにわからない。

4週間の間に僕は謎の手術を受けさせられ、貴族に売られた僕は養子になった。


正直、嫌だ!死なせてほしい!そう思った。

だが従わない場合にはこれから帰還するかもしれない同僚を見殺しにするぞと脅された。おとなしく従った後に現在に至る。



「レイ、我が息子よ、お前には金貨500枚の価値があると父が認めてやろう」

「ありがとうございます」

庭園に倒れている従騎士達を見て満足気に自分の仮の父は微笑んでいた。


「やはりあの部隊にはレイ、お前が適任だ」

「今日のうちにキーア港の砦に行け、わかったか?」

「はい」


庭園を足早に出て近くにいた従僕に馬車を持ってくるように命じた。












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