ダルメキア帝国1

帝国軍が敗北を喫したラキードから馬を駆けさせて十日もかければ帝都ダルメキアを見ることができる。


アティミカに長らく支配を受けてきたプーゲ半島の諸国には城壁が無い、この地を統治していたエルフが無用と判断したため、全ての城壁を破壊してしまった。

遠くから見ても街並みが分かる帝都は今は平穏だった。



魔術協会本部(通称ペラン):試験室

「さっさと起きなさい!」

体を蹴られ、意識が激しく浮上する。

(痛い、痛い、)

蹴られた箇所を手で覆う。

「う、うう」

目を開いて蹴ってきた方向に振り向いたが全身を巻き付ける布に遮られた、意識がはっきりしていくうちに体中に包帯が巻かれていることが分かった。蹴ってきた人物の姿は分からないが声からして赤い短髪が特徴のメート様だと分かった。

「他の奴は?」

「分かりません」

「そう」

目の前にいるメート様は魔術で僕たちのような人間を生み出した人だ。

「ブラウンめ!」

大声とドアが蹴られる音が同時に聞こえた。



どうして僕はここにいるのだろう?

目覚めたばかりで意識が朦朧している。

あっ

「テミンは!?」

起き上がろうとした瞬間、激痛が走った。

「ぐっぅ」

「まだ動かさないでください」

知らない人の声がした。

「まったく、酷いけがでしたよ」

「愛馬のテミンは?僕の同僚は?」

「私には分かりません」

「明日には治療が終わりますので、それまで寝ていてください」

「分かりました・・・」

今すぐに会いたい、けどあの戦いで誰が会えなくなったのかを知るのが怖くなった。

・・・テミンは生きてる、僕が生きているのだから当然だ!

背中を丸めて、再び瞼を閉じた。



明日、会えると信じて、









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