魔法探検俱楽部はオタクぞろい2

1-2 全力の土下座


「申し訳ございません……」

僕はすべての片づけが終わった後にユイにぶん殴られてできた、たんこぶを頭に抱えて目が覚めたアヌベスに土下座した。

うん、マジで痛かった。意識ぶっ飛んでたもん。

デイジーも両頬つねられて顔が腫れている。

ただし、デイジーは部長の僕に乗せられた所が大きいため、僕は目覚めて速攻で責任を取って全力土下座中。

「うー?何してる?」

アヌベスは僕の行動に首をかしげるばかり。

「アヌベス、お気になさらず。ただの罰ですので」

「うーん?」

「……本人は覚えてないみたいだ」

憐憫の眼差しのキリウスがボソッと僕に耳打ちした。

「えっ、頭打ってたの?」

「それはない。あー、まあ。あれだけの目に見つめられたショック状態かも?」

「あ、そう……」

またもや歯切れの悪いキリウスの言葉にすごい罪悪感を覚える。

「ミシュナ。反省したなら顔を上げて」

「はいぃ~。……って、もういいの?」

ユイは呆れた顔で続ける。

「はぁ……。もういいわよ。貴方に悪気がなくてやったのは分かっているから。

ただ、蒐集品はもう少し選びなさいよ…何なのあの露出の高い彼女たちの人形や小説……」

ハンク家の歴史の真相を重んじるユイには、あの魔改造フィギュアや女の子同士のラブ小説はちょっと受け入れられないみたい。

僕はアリだと思うんだけど、同じオタクでも譲れない一線はあるものだ。

「ははっ」

「笑い事じゃないのよ、全く……。新入部員をドン引きさせてどうするの?」

ユイの言う通りだね。

今回は僕の不注意だし、考えが足りてなかった。

僕はユイの許しを得て顔を上げる。


あれ?


「全部片づけたと思った」

「感謝しなさいね、新入部員のキリウス君に。

忌みつの方角に飾ったあの絵画は皮肉が聞いていて面白いって。だから残したの」

キリウス!僕のこだわり分かってくれたの!?

不吉の方角といわれるその一角には数枚の絵画が残されていた。…ちょっと嬉しい。

「それにしても、よくあんなに集められたわねぇ……。ちょっと引くくらいの量があったけど」

「えへへ」

「褒めてないから、もう。すぐ調子に乗るんだから」

ユイがジト目で睨んでくる。

「あのー。アヌベスさんは大丈夫ですか?怖くないですか?」

オロオロとデイジーがアヌベスに問いかけている。

「…?いっぱい無いは、怖いない。いっぱいこわいだった」

「そうですか……?よかった」

「うん。たくさん、いない。こわくない」

アヌベスとはクラスメイトだけど、あんなにしゃべっているのは初めて見るな。

しゃべり方は随分幼く、デイジーと話す姿は年の離れた姉妹のよう。

「アヌベスってどんな子なの?」

最近転入してきたキリウスとは顔見知りっぽいけど。

「…その前に、この倶楽部の趣旨を説明してもらいたいんだが。

最初の顔合わせでは新種の魔法が起こす現象、怪異の調査と聞いていたけどさ。

あれだけのハンク家の蒐集品を飾ったのは、意味も無くじゃあないんだろう?」

キリウスが興味深げに訊ねる。

「もちろん」

僕は胸を張って答えた。

「魔法探検倶楽部は、学園内外で起こる不思議な事件や怪異の現象を調査して、解明するのが目的だよ。

そして、それを魔法研究に役立てるのさ。

だけどね、ハンク家は魔法の素養もない一族なのに、新種の魔法の発生源になっているケースが多いんだ。新種の魔法は呪いに近くて、僕たちの世代だと『怪異』って呼ばれているよ」

「ほう。それにしては、魔法と無縁な俺をあっさりとよく引き入れたな」

だって、君はユイやデイジーにハッスルする、性欲丸出し下半身ゆるゆるモンスターじゃないもん。

まあ、僕の索敵魔法で性欲のパラメータのチェックをしていたなんて、言わないほうがいいよねドン引きされそう。


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