一言、謝罪。
「おはよう」
と皆は一言。
「こんにちは」
と友達は一言。
「さよなら」
と先生は一言。
「おかえり」
と家族は一言。
「ただいま」
と言えない私。
「あのさ」
とあなたは一言、
喋りたくもないくせに、あなたは話しかけてくるんだ。私に謝るために。
あなたは酷いね。だって私を悲しませたから。だって私を苦しませたから。
あなたがあの一言を言わなければ、まだ幸せだったのに。
あの日、あなたはこう言った。
「浮気してるんだ」
この一言を。私とあなたで楽しくカフェで話してたのに。さっきまで楽しく遊んでたのに。この一言で、苦しくなって、辛くなって、悲しくなって。涙が溢れて、そこから走って逃げた。もちろんお金は置いてないし、そんなこと気にしてなれなかった。あの後、何度も別れ話をしに、謝りに私のところへ来たね。まぁ避け続けてきたけれど。
だって、許せなかった。後もう一度話をすれば私とあなたとの間にあったはずの赤い糸がぷつんと切れて、消えてしまうような気がしたから。だから、もう話せないよ。きっとね。
そう、そう思ったはずなのにさ、君はまた話しかけに来た。嫌だなぁ、諦めないところが、好きだったんだけど。
あなたが、
「かわいいね」
「ありがとう」
「大好きだよ」
「別れたくないな」
「離さないから」
「似合ってる」
「嬉しい」
「浮気なんてしないよ」
「ずっと一緒にいよう」
って呟いた一言、忘れてないよ。
私、記憶力だけはいいからね。
でも、でもね、今聞こえた一言だけは忘れたい。
「別れよう」
って言葉。あなたから聞きたくなかったんだけど。しょうがないね。こんなにだらしない私で、不甲斐ない私で、くだらない話しか出来ない私で、あなたに別れようって言わせて、
「ごめん」
って言ったら、あなたはきっと許してくれるんだろうね。
…けど、けどね、私は、私は、
君が
「ごめん」
って一言謝っても、
きっと許さないよ。
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