第49話 勇者時代のボクでもアレは無理だわ……

「お に い ちゃーん!!」

「………」


VRゴーグルを外した瞬間しゅんかんに俺に飛びついてきたすず

きんトレれき3ヶ月、いまやほそマッチョの俺をめるなよ!!

素早すばやくベッドから離脱りだつし、ゲーミングチェアに着地ちゃくち

まんまとっかかったすずはぼふんとベッドにキスをした。


「もー!なんでめてくれないのー!?いもうとからのあいあかしをー!」

「えー、そう言われてもさぁ、まえに受け止めたとき

 おまえ俺の腹筋ふっきんかたいからヤダって言ったじゃねぇか」

「だから、腹筋ふっきんじゃなくって体全体からだぜんたいで受け止めて♡」

「それおまえのキャラじゃないだろキッショ」

「女の子に向かってぇ、キショいっていう言葉はないと思いますぅ」

「じゃあやめろ」

 

いまは…、夕方ゆうがたの5時か。

まぁまぁいい時間帯じかんたい

すずいてさっさと階段かいだんりる。


「今日の晩飯ばんめしなにがいいー?」

「カツどんー」

「はいよー」


二階にかいの俺の部屋へやからゴソゴソとした音がこえる。

どーせ俺のマンガでもあさってるんだろう。

俺はエロ本なんざってないんだよ。


「もー、お兄ちゃん一個いっこもいやらしい本持ってないー、面白おもしろくないー」

「俺は興味きょうみがねーんだよ」

「えー、高2のクセにれてるぅ」

「うるさいなー」


ぐだぐだとした会話かいわをしつつさっさと作り、皿にって出す。


「やったー!いっただっきまーす!!」

「はいはい、いただきます」


ささっとほうみ、片付かたづけて階段かいだんを上がる。


「えー、もうゲームに行くのー?

 お兄ちゃんそのゲームにハマりすぎー」


と言いつつもすずももう食べて上がってきている。


「ブーメランはなつなよ。どちらかというとおまえの方がIWOやってる時間長いじゃん。受験生じゅけんせいのクセに」

「それは言わなくていいんですぅ」


ぶーたれるすず

その視線しせんが俺からはずれたその瞬間しゅんかん…、俺は走り出す。

気づいたすずもすぐにってくるが、その前に部屋へやに入って今度こんどはきちんとかぎめた。


がちゃん!

がちゃ、がちゃがちゃがちゃ…


ふふん、おそおそい、兄に勝てると思うなよ!

してやったりという思いもめぬまま、俺はIWOにダイブした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「………………は?」

『いやぁ、やっぱりセイもそういうリアクションするよね!

 早さヤバすぎだよね。ものの1時間で枠組わくぐ完成かんせいさせるって……』


ダイブした俺の前には、家の枠組わくぐみと庭のかべ枠組わくぐみ。

うっそーん…


【みゅーっ!セイおにいちゃんみゅぅ!】

にいちゃん来てたみゅー!?】

【がんばったみゅー!】


たたっ、と俺にってくるワームたち。

キラキラとした目が『ほめてー』と言っている。


「えーと、うん、がんばったなー」


よしよしとでるとれる。


「ムム、いるか?」

【いるみゅよ】

「えーと、これは…、どういう状況じょうきょう?」

りすぎて予定よていきでやった状況じょうきょうみゅ】


oh……………


シーン…


「うん、よし、みんながんばったな!」

【みゅっ!】

【がんばったみゅ!】

「がんばったみんなにはごはんだ!」

【やったみゅー!!】


いやぁ…、この純粋じゅんすい幼稚園児ようちえんじたちがあの…、あの恐ろしき巨大蚯蚓アイツらだとは思えないな………。

いやいや、考えるのはやめよう、巨大蚯蚓アレ幼稚園児コレは別物だ、オケ?


『うわすっご、考え事してる?

 手の動きめっちゃ速いんだけど。残像が…』

『かんがえながらおりょうりしてるー』

『あるじすごいー』

『えー……、勇者時代のボクでもあれは無理だわ…』


うーん、でもな…、あっ、《無害化》したから、ワームたちはワームではなくなっているのでは?


【兄ちゃんすっご】

【あれがいわゆる『かみわざ』ってヤツ?】

【すごーい!】

【わたしもやりたい!】


あとで《鑑定》しよう。

でもなぁ、ワームたちに建築を全て任せるのは忍びない…

あっ、新しい無害化したヤツを連れてきたらいいかな?

でも、どの魔物を無害化するか……


『セイ〜、聞こえてる??セイ??』

「はっ!」


ハッとした俺の前には、約90人分のごはんが出来上がっていた。


「あー、うん、みんなー、食べていいよー」

【【【【やったー!!】】】】


駆け寄ってくるワームたち。

最近分かったことがある。

ワームたち、すっごい大食いなの。

2倍でちょうどいいくらいにね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る