第47話 ワーム大量発生


「フーマ爺!ムムは?」


例の無害化むがいかしたワームには、“ムム”という名前をつけてフーマ爺の家にお手伝いさんとしてあずけている。


「おぅ、ムムなら今頃いまごろ屋根上やねうえ昼寝中ひるねちゅうだ」

「ありがと!雪花、みんなも出てきていいぞー!」


影から全員ぜんいんが飛び出たのを確認かくにんし、屋根上に向かう。


「ムム!」

【みゅー……】


屋根の上に来てみると、ムムは鼻提灯はなちょうちんを作ってすやすやとねむっていた。

お、起こすのがしのびないな…。


「ムムー、ムムちゃーん」

【みゅあ?】


パァン!


鼻提灯はなちょうちん破裂はれつ

こんなマンガのようなオヤクソクがあるのか、このゲーム。

なんというかこう…、運営うんえいさんの遊び心を感じる……。


【ん〜、セイみゅー?なに、ボクのおひゆねを邪魔じゃましてまでなにが言いたいみゅぅ】

「おまえの仲間…、ワームって何匹なんびきぐらいいる?」

【30は余裕よゆうみゅ】


ねむたげなひとみで答えるムム。


「前にさ、家を買いたいって話をしただろ?」

【したみゅね】


ほわほわとあくびをする姿はあいらしいがもとはミミズであることを忘れてはならない。


「それでさ…、家、作るの手伝てつだってくれない?」

【へぁっ?】


きょっとーん、という顔をしてこちらを見るムム。


【家…、いちから作るみゅか?】

「あぁ、そうだ。

 設計図せっけいずも作り方もあるからな」

【なにそれ…、楽しそうみゅ!!】


さっそく仲間なかまあつめてくる!!

とムムが主張しゅちょうするので、俺はムムにフード付きのローブをした。

このローブ、朱乃あけのさんにもらった物で、『隠者いんじゃのローブ』という。

着ると他の人から姿すがたが見えなくなるすぐれもの。

だが、俺には《隠蔽いんぺい》があるのでいらないのだ。


「雪花ー、留守番るすばんたのめるかー?」

『おっけ〜』


返事へんじが返ってきたので、そのままとなりの家の屋根やねに飛びうつる。

ムムも飛び移ってくるが、本来ほんらいそのローブの持ち主は俺なので俺にはムムがどこにいるのかが丸わかりなのだ。


「いくぞ、ムム」

【みゅ!】


俺とムムはしずかに屋根の上を走り出した────。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「「「「グラアァァァァアァ!!」」」」

「ひぃ」


目の前の光景こうけいにうっかり気絶きぜつしそうになる俺。


【セイ!気をたしかにたもつみゅ!

 ………、ボクも気絶きぜつしていい?】

「なぜ!?」

【いや…、巨大蚯蚓ボクってこんなにキモかったんだなぁって】

同族どうぞく姿すがたに引いてる!?」

【………しかたない、勧誘かんゆうを開始するみゅ!】

「よ、よし…」


風の精霊にたのんででムムの声を大きくする。


【みなのもの聞くみゅ!

 ただいまより勧誘大かんゆうだいセールを開始かいしするみゅ!!】


勧誘大セールってなに…?

と思うが、なにも言わないことにする。


「グル、グルルアー!?」

【そこ、いい質問しつもんみゅ!給料きゅうりょうは…、三食寝床付き!!】

「「「グルアアアアアア!?」」」


会話かいわ成立せいりつしている…、だと…!?(戦慄せんりつ


仕事仕事は家づくりとはたけ!やりたい人はー!?】

「「「グルアァァァ!!」」」


数にしておよそ40。

やっば。


「えーと、じゃあ、無害化かけるぞー?」

一列いちれつならんでー!】

「「「グルゥ!」」」


綺麗きれいに一列に並んだワームたちに《無害化むがいか》をかけていく。


「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】

「《無害化》」【みゅっ!】


なにこのエンドレスループ……

目の前で巨大蚯蚓バケモノ可愛かわいロリショタになるのをみる複雑ふくざつ気分きぶん

おわかりいただけるだろうか。


【これで最後さいごみゅ!】

「《無害化》ぁ…」【みゅぅっ!】


心が死んだ俺は、真っ白にきたのであった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る