第43話 少女との激闘

「あああああああああ!!!」


はい、前回と同じく絶叫ぜっきょうから始まりましたごめんなさ────


ヒュガッ────!


「ぅをっ!!」


とっさに姿勢しせいを低くする。

その瞬間に、頭上ずじょうを飛ぶ斬撃ざんげきがかすった。

銀色長髪ぎんいろちょうはつ狐耳きつねみみ&尻尾しっぽ状態じょうたいで魔力を解放してるのに勝てない。

いや、いやね、朱乃あけのさんに土地ゆずってもらえるように交渉こうしょうしたらさ、『自分で交渉こうしょうしな』って言われて…。

連れてこられた島でひとり九尾狐ナインテイルの女の子と戦っている。

雪花たちは今頃いまごろリンとレナと一緒におちゃ菓子がしでも食べているのだろう。

くそぅ、なんで俺だけ…!


「よそ見をしているひまなんてあるの?」

「ひぃっ!」


なんなの、なんなの!?

九尾狐ナインテイルってさ、この世に2匹しかいないんでしょう!?

全力状態で、必死に戦う。

下手したら死ぬ。

レベルアップだのスキルゲットだのとウィンドウがピロピロうるさいが構っていられない。

一瞬でも目を離せば…!


「弱い。これじゃ、この場所は譲れない」

「くっ…、そもっ、そも!なんっ、で、戦わないと、いけ、な…っ!」


ゼフィとレヴィもいないので、借り物の木剣を強化しまくって使っている。

強化しなければ一瞬で真ん中からポッキリだ。


「私が認めた者以外に、ここを明け渡したりなんてありえない」

「戦いでっ、しか、認めてくれな、ぅをっ!、いのッ!?」

「当たり前」


普通は言葉で解決するよね?

“当たり前”とは?

えぇい、俺の必殺…!


「《部位転移》!」


腕の先だけを少女の背後に転移させ、木剣を投げる。


「見え見え」

「チッ…!」


おっと、(見た目だけ)年下の少女に本気マジで舌打ちをしてしまった。

基本的に狐族は長生きだからね。

九尾狐ナインテイルともなるともはや不老不死に近い。

故に見た目だk…


ドン!


右にステップを踏むと、左耳をかすって斬撃が飛んだ。


「をあっ!、っぶな!」

「いま、失礼なこと、考えた…?」

「いえなにも!」


ばけ ものだァ!

怒りのせいか、少女の猛攻もうこうが止まる。

この隙に交渉してしまおうと口を開く。


「そもそもなんで長剣ちょうけんなんだよ!

 俺の武器ぶき双短剣そうたんけん!!戦いにくすぎてやばいんだけど!?

 不公平ふこうへいだよ!?俺は使い慣れてない武器なのにさ、そっちは愛剣あいけんなんてありえなくない!?」


言い負かした、完・全・勝・利!!!

カンカンカーン!という音が脳内のうない再生さいせいされる。

ふはははは、勝負は引き分け、戦いは勝利!

これは勝ったと言っても過言かごんではないよね!!


「そう、じゃあこれ」

「ほへ?」


投げ渡されたのは…、双短剣?

え?これってどういぅ…


ダンッ!


「なんでえぇぇえ!?」


一瞬で目の前に現れた少女の一撃いちげきふせぐ。


「すごい、ほんとう。

 長剣ちょうけんだったらけたのをふせいだ。

 わざわざ双短剣そうたんけん創造作った甲斐かいがあった」


え?まさか…、戦闘続行せんとうぞっこう??


「い、い、い…!」

「続ける。受けろ!」

「いやだああああああぁぁあああ!!!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜一方その頃〜


『遠くからセイの叫び声が聞こえたような気がしたけど、気のせいだよね!』


雪花がニコッと笑う。


『せい、だいじょうぶかなぁ』

『いきてかえってくる?』


うらら&サクラのちびっこコンビがウルウルの瞳で雪花を見上げた。


『もちろん!セイはしぶと…、ねばづよいからね!ちゃんと帰ってくるよ!』


そんな雪花をソルがジト目で見つめた。


『いま“しぶとい”って言いかけたし、“生きて”帰ってくると入ってないんだよな…』


はぁっ、とため息をつき、ソルはジッと自らの主人が消えていった島を見ていた。

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