第42話 ワームと無害化スキル、そして雇用

「ああああああああああ!!!」

『待って、まってええええ!むり、マジでムリ!』

『キモいキモいキモいやめて、本当に受け付けないから!』

『近づかないで、森ごと焼き尽くすわよっ!?』

『きもちわるいー!!』

『いやだー!!』

『追いついてきましたああああああ!!』

「『『『『あああああああああああああ!!!』』』』」


上から順番に俺、雪花、ソル、白華、麗、サクラ、天花、最後に全員。

今、俺たちを追っているのは…、巨大蚯蚓ワームである。

でっけぇクソキモいミミズ。

狼森ウルフフォレストを進んでいたら出てきた。

俺たち全員が“虫とかムリなんですけど”派だったので、視界しかいに入った瞬間しゅんかんにすぐさま右向け右、脇目わきめもふらずに全力ダッシュ。

いやね、ミミズさんもちっちゃいならいいのよ。

いい土にしてくれるから。

でも、でもね!?

こんな…、トラックみてぇな太さで、余裕よゆうで3mぐらいあるのを“ミミズ”とはいわない!!


『セッ、セイ!!あの、この前の“無害化”のスキル、使ってみようよ!』


ソルが俺を見て言う。

かっこいい風に言ってるけど、それって責任せきにんの押し付けだよな!?

俺、あのスキルなんなのか知らな…!


「グラアァァァァ!!!」

「きゃああああああああ!!!む、むむむむむむ、《無害化》ぁ!!」


もはやままならない思考しこうで女のような声を出しつつスキルを使用した。


カッ!


うわ、目が!!

ワームが光る。

そして…、みるみるちぢみ、


【なっ、なにがあったんでみゅ!?】


ひざほどの高さしかない身長、クリクリとした黒い瞳。

褐色かっしょくはだの麦わら帽子ぼうしをかぶった男の子だった。

腰あたりから…、尻尾しっぽ

まさか、ワームの


「えっ…、わ、ワーム!?」

【人間!?】


たがいにギョッとし、ずざざあぁ、とはなれる。


【むむむむむー】


あいらしくうなり、飛びついてくる。


「うわっ!?」

【がぶし!!】


うでに噛み付いてきた…、と思いきやまったく痛くない。

おぉ、これが“無害化むがいか”………


『かわ、いい…?』

『ちっちゃくなった………』

『ワーム…?』


やがて無理だと判断はんだんしたのか口を離し、げようとして…、俺につかまった。


【う〜!は な す みゅ〜!!】

「ちょっと待とうかワームくん!君、俺にやとわれる気はある!?」

『ちょっ…!?』『セイ!?』


まさかのワームへのやといたい宣言せんげんに雪花たちがギョッとする。


【ぼ、僕はそんな簡単にはだまされな────】

三食さんしょく寝床ねどこ付き」

【乗ったみゅ!】

『ウソだろ!?』


一瞬で落とした。

この世界ゲームは結構『三食寝床付き』という言葉ワード魅力みりょくを持つ。

過酷かこくなほぼほぼサバイバル、剣と魔法の世界だしね。


「ウチのカーネーションのお世話役、欲しかったんだよなー」

『だからってさ、数分前まで敵だったヤツをやとう、フツウ!?』


マトモなツッコミ、どうもありがとうございます!

いやねぇ、俺もどうかと思ったんだけどさ…、放置ほうちするわけにはいかなくない?

こんなさ、おめめクリックリな美少年びしょうねん…、美幼年びようねん??

がさ、ひとり森の中にいたら………、うわさになるよね?

って考えたらさ、雇用こっちがマシだよね…!!

という話をすると、みんなも渋々しぶしぶだが納得なっとくしてくれた。


『セイ、ボクさ、思ったんだよね』

「ん?」


雪花がいう。


『前にさぁ、家買おうって話したじゃん?』

「あぁ、したな」


結局土地がなくて諦めたよな。


朱乃あけのさん、もうひとつぐらい土地、持ってそうじゃない??』


あっ。

あー!!

そういえばッ!


『仲間も増えてきたし、家、買った方が良くない?』

「た…、たしかに…!!」


俺たちは顔を見合わせた。

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