第39話 救出と勇者


『はいはい呼んだー?』


雪花と天花たちには周りの警戒けいかいをお願いしていたのだが、雪花は俺の声を聞くなりバビュンとすっ飛んできた。


「すまん、1匹だと思ったら2匹いた。

 血まみれだし、一刻いっこくも早くフーマ爺の家に連れ帰りたい。

 ドッペルゲンガーを先に帰らせて、フーマ爺に事情を伝えておいてくれ」

『ラジャ!』


後ろ足で立ち上がり(どうやって?)右前脚みぎまえあし敬礼けいれい(どこで覚えた?)。

一瞬いっしゅんふざけたが、雪花はすぐに分身を作ってくれたので俺の転移で送った。


「よし…、とりあえず白猫の方を《鑑定》!」


〜〜*-*-*〜〜〜

名前:

性別:男

種族:《隠蔽いんぺいされています》

Revel《隠蔽いんぺいされています》

魔力:《測定範囲外です》

体力:1/162000

俊敏:2/180(呪効果)

筋力:50

頑丈:10

運気:1920

状態:瀕死

加護:《隠蔽いんぺいされています》

技能:《隠蔽いんぺいされています》

称号:《隠蔽いんぺいされています》

〜〜*-*-*〜〜〜


え、隠蔽?

なにそれ便利べんり

まぁいっか、次!


〜〜*-*-*〜〜〜

名前:

性別:女

種族:混血(光猫・闇猫)

Revel1

魔力:4/120

体力:1/150

俊敏:1/160

筋力:2

頑丈:5

運気:2000

状態:瀕死

加護:《勇者のの加護》

技能:《かみつく》《ひっかく》

称号:《失った者》

〜〜*-*-*〜〜〜


「ふぅー、なるほどね?うん、まぁ、いろいろ言いたいことはあるけどとりあえず…」


俺はよごれるのもかまわず2匹をかかえてさけんだ。


「天花、来い!コイツらどっちも救急搬送きゅうきゅうはんそう決定だ《転移》!!!」


すぐに白華と麗の首根くびねっこをくわえてやってきた天花と一緒にフーマ爺の家に転移した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「フーマ爺!!」

「おぅ、セイ、話は聞いた、風呂ふろかしたし、暖炉だんろの火もつけた。助けてやれ!」

「あぁ!」


もはや俺の転移も見慣みなれたフーマ爺が万全ばんぜん準備じゅんびをしてくれていた。

最初は自分の部屋に入り、2匹に光魔法の《回復ヒール》を魔力をふんだんに込めて使う。

別に上位じょういの《上位回復》でもいいんだけどさ、アレって状態異常じょうたいいじょう治せないし。

回復ヒール》なら《状態異常回復リカバリー》付きだし。

効果範囲こうかはんいせまいのがたまキズだけど、それは魔力をいっぱい込めれば済む話。

そしてそのまま風呂に直行ちょっこう

白猫の方は大人しかったけど、黒猫ちゃんが大変たいへんだった。

まぁあばれるあばれる。

ぎゃあぎゃあと雪花を動員どういんして取り押さえて頑張がんばった。

白猫の方も黒猫ちゃんのためだとわかっているのか、助けようとはしなかった。

そしてタオル(羊毛製。俺が作った)でくるんで暖炉だんろの前であたためた。


『ありがとう、助けてくれて』


そう白猫が言う。

うん、本当に《言語解読》様々さまさまである。


「いや、さすがにほうっておくわけにはいかないしな」

『だとしても、だよ』


にっこり笑う猫。

まぁ、助けた理由はもうひとつあるんだが…。

俺からしか見えないんだよな。

実はさ、精霊たちがさわいでたんだよね。

『ゆーしゃが、ゆーしゃが』って。

特に光の。

薄々うすうす感じてたが…、白猫コイツ、勇者だろ。

黒猫ちゃんに《勇者の加護》があった時からちょーっと変だと思ったんだよな。

人間くさい動作どうさに、光の精霊たちの反応。

でも、祭り上げられてないからおそらく“元”かな。

なーんでこんな面倒ごとが毎度毎度まいどまいど転がりこんで来るのかね。


『それで…、実は、ボク…、元勇者なんだ』

「うん、知ってる」

『え”』


白猫は目を丸くした。

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