第33話 島は秘密の特訓場?


「おばあちゃんはそこにいるよ?見えないの??」

「よしな、りん。あたしの姿は普通のやつにゃ見えなんだ」


声だけが聞こえる。

これが、凛のいう『おばあちゃん』?

じっと、声のする方向に目をこらす。

すると、ぼんやりと見えてきた。

陽炎かげろうのように揺らめく人影。


「………誰…?」


俺が呟くと、凛とその人影が驚いたようなリアクションをした。


「おばあちゃん、やっぱりセイお兄ちゃんはおばあちゃんのこと見えてるよ!!」

「あぁ…、驚いたね、同類とは…」


同類?

少しその意味がわからなかったけれど、狐の耳と尾のことかと思い至る。


「これですか?」


びしょびしょに濡れたフードを取る。

すると、ますます驚いたようだった。


「月狐!?月を司るかみきつねじゃないか!」

「神の狐?」


ちょっとよくわからない単語ワード満載まんさいだ。


「あぁ…、この世に二体の神狐じんこさ。

 太陽を司る陽狐ようこと、月を司る月狐げっこさね」


話しているうちに、人影の姿がはっきりしてくる。

八十歳ほどのおばあさんだった。

もちろん、狐の耳と尻尾付きの、だけどね。


「あ、見えた」

「おや、あたしの姿が見えたのかい」


隣の雪花もやっとこさ少し見えるようになったらしい。

目を凝らして『あれ?今見えてたのに…、あれっ?』としきりに瞬きをしている。


「はい、見えました。」

「そうか…、家におあがり、暑いだろう?」


この世界は現実リアルでの1日で2日経過…、つまり12時間で1日が経つ。

だが、体感的にはちゃんと24時間だ。

ゆえに実質この世界は730日で一年なのだ。

だが不思議なことに季節は現実リアルと同じである。

今、現実リアルは初夏。

まあまあそれなりに暑い。

イコールこの世界も結構暑い。

俺今結構汗かいてる。


「あ、はい…」


おばあさんに続いて歩いていると(もちろん靴は脱いだ)、先程の中庭の(っぽいところ)が見える縁側のような場所に出た。


「座っておきな。玲奈レナ!!茶を用意しな」

「はーい、わかったー」


そこに座っていた凛そっくりな黄色い着物を着た女の子(無論むろんケモミミ&尻尾付き)が奥に駆けていく。


「さて、まずは自己紹介といこう。あたしは朱乃あけの

 この星降り島の主のようなものさ。」

「俺はセイです。なんか噴水の水に触ったら連れてこられました。」

「そりゃ凛の仕業しわざさ。あの子は水の力をもっとるからな。

 水つながりで噴水の水と池の水をつなげて連れてきたんだろ。」

「ははぁ」


凛はなにやらすごい力を持っているのか。


「セイや。ここはな、狐の種の者たちの特訓の場のひとつだ。

 ここにきたからにゃ、あんたも修行せなあかん。」

「え”っ!?」


中庭で雪花と凛が遊んでいる。

たのしそうだなぁ。おそらきれい。(現実逃避)


「なぁに、ここで修行すりゃ、五尾狐ファイブテイルぐらいにはすぐになれるさ」


ちなみに最近知ったのだが、種族名は詳細を言えば『月狐』だけではなく『月狐・〇〇』みたいになるらしい。

一番上は『月狐・九尾狐ナインテイル』。

強さに応じて尻尾は増えるんだとか。


「えーと、修行っていうのはどんな…?」

「そうさね、そりゃやってみなわからん。そら、行くぞ」

「え、いや、ちょ、あ、ああああああああ!!!」


俺の悲鳴が空に響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る