第32話 星降り島


前回のあらすじ:白色のカーネーションを持って帰った。

        おじさんから買った本が不思議な機能(?)を持っていた。

        家を買いたい。


「うぇ?」

『ふぉあ?』


大工屋のおっさんに早速話を持ちかけると、ウィンドウが出てきた。


〜〜*-*-*〜〜〜

家を建てる場所を指定してください

〜〜*-*-*〜〜〜


「マジ?」


決まってないんですけど。


「うーん、どうしよう」

『ま、急ぐことじゃないし、攻略ついでに場所探しすればいっか。』

「だな」


俺と雪花は、鎖依頼チェーンクエストを完了するためだけにこの街にとどまっていた。

ちょうどあの花屋で鎖依頼チェーンクエストは終了で、もうやり残したことはないのだ。

大工屋を出て大通りを歩くと、さまざまな住民NPSに話しかけられる。

また遊びにきてね、とか、この前はありがとう、これあげる、とか大方そんな内容だ。

新規プレイヤーには、『なんだあのプレイヤー。NPSにたかられてる』とぎょっとされることもしばしば。

ふと、そろそろだと街の中心に行く。

この街は大きく『北部』『東部』『南部』『西部』に分けられる。

四つの地区はそれぞれ扇型おうぎがたに広がっていて、まぁつまりこの街は丸いのだ。

その街の中心部。

そこは噴水広場だ。

その噴水の少し北に大きな時計塔。

俺がいるのは噴水の少し北だ。

最近…、そう、カーネーションを手に入れてから、水に惹かれるようになった。

もちろんゲーム内だけだが、水が好き、水に触れたい。

そう思うのだ。

そしてその思いが限界に達すると、衝動的なものに駆られる。

なのでその発作ほっさ(?)が起きないうちに定期的に水に触れるのだ。


「はっ、はっ、はっ、はっ、」


ジョギング感覚で走っているので、体力値HPが増えているような気がする。

早速噴水の水に触れ────。


「ッ!?」

『うわっ!?』


ばちゃんっ


噴水の水の中に引きずり込まれる。

雪花も一緒に引きずり込まれたらしい。

吸い込まれるようだった。

だれかに手を引かれているような。

水の中を、だれかの手を頼りに猛スピードで進んでいる。


「っ!」


息が苦しくなってきた。

早く。早くして!!

ちょっと冗談じゃなく『死亡デス』するから!!

そんな俺の想いが通じたのか、やっとのことで水から出る。


「かはっ、はっ、はぁ、はぁ、はぁーっ、」

『ごほごほ、おるぐぇ…』


両手を地に着いて呼吸をする。

やばい。酸欠さんけつだ。

隣の雪花が結構やばい音を立ててゴホゴホ言ってる。


りん?お客さんかい?」

「んーん、お兄ちゃん連れてきたー」


りん?だれだ?

上を見ると、浅葱あさぎ色の着物を着た女の子がいた。

狐の耳と尻尾付きの、だけど…。

周りを見渡すと、日本風のお屋敷の中庭のような場所にいた。


「お兄ちゃん、だいじょうぶー?」

「え、と…、凛ちゃん?」

「うん!りんはりんだよ!お兄ちゃんはだーれ?」

「俺はセイだけど…、ここは?」

「ここはねー、星降ほしふじま。りんと、れなと、おばあちゃんがいるよー」

「れな?おばあちゃん?」


よくわからないけれど、ここは『第1フィールド』ではないらしい。

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