第28話 [精霊伝説]


前回のあらすじ:《草精霊の興味》なるクエストを受けた。

        P.S.雪花許すまじ。


カランカラン♪


「いらっしゃ…、って、セイの坊やじゃねぇか」

「はよ、おじさん」


今日はよく通っている本屋にやってきた。

実はこの店、1ヶ月くらい前は

IWOの街は、武器屋や薬屋、定食屋に宿など一定の店は入れるが、それ以外の店…、そう、例えばこの本屋のように別に冒険に関係ない店は入れない…、はずだった。

1ヶ月前、興味本位きょうみほんいで開かなかった本屋の扉を開けて見たら…開いた。

入って見て、カウンターにいたのは…、見知ったNPCだった。

下水道のネズミ退治クエストの依頼主だ。

クエスト終了後も何気なにげに手帳と串焼きなど、取引で交流を続けていたのだ。

どこから手帳を入手しているのかと思っていたら…、まさかの本屋の店主だった。

どうやら開かない店の扉は、NPCの好感度が一定を超えたら順番に解放されていくらしい。

俺は普通のプレイヤーより長くこの街に滞在しているからかなんなのか、この街のNPC(ノンプレイヤーキャラクター)からの好感度がとても高い。

ゆえに!俺は今、ほぼ全ての店に入れる状態なのだ!!

ふはははははは!!!


「何か面白い本、入荷した?」

「おうよ。ぼうが好きな精霊様の本だ」

「好きって…」


別に好きなわけじゃあない。

少し興味があるだけだ。


「ほれ、これだ」


差し出された本を見る。

古い本だ…、ちょっとぼろっとしたのが浪漫ロマンがある。


「『精霊伝説』?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

我らが使う魔法は、必ず精霊を通している。

簡単にいうと魔力と魔法を交換しているのだ。

ゆえに、精霊に愛された子…、愛子いとしごは、

魔力を代償にすることなく、つまり何もしなくとも魔法が使える。

これを『精霊術』と呼ぼう。

通常の人は魔力を代償にしなければ魔法が使えない。

だが、代償にする魔力量を減らすことはできる。

例えば…、そう、『契約』するとか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これ、物語っていうより論文だよな?

しかも…、俺、魔力を代償になんてしてな……。

あ。俺…、愛子いとしご…、いや、神子みこだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

興味を持ってもらうのは簡単だ。

火の精霊は 火を一定時間灯し続ける。

水の精霊は 水の近くに一定時間いる。

風の精霊は どこか高いところから飛び降りる。

土の精霊は 洞窟に一定時間いる。

光の精霊は 強烈なフラッシュを浴びる。

闇の精霊は 《暗視》スキルの獲得。

草の精霊は 草原に一定時間いる。

氷の精霊は 氷属性の獣を一定数討伐する。

空の精霊は 解明されていない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


およ?これは…、あれか?

《〇〇精霊の興味》クエストの出現条件?

俺が持ってるのは…、《草精霊の興味》。

条件じょうけんは、草原に一定時間いること。

俺があの日草原エリアにいた時間が条件をクリアしたってことか。

でも肝心かんじんの契約方法はってないな。

いや、正確に言うとっていないのではない。

白紙なのだ。

残りの三百ページ近く、全てが白紙。


「はぁ…」


ま、もともと契約するつもりはなかったしね。


「これ、もらうよ。お金ね」

「まいど」


結構な頻度ひんどで本を買っていて、そろそろ倉庫ストレージがいっぱいになる。


「どうしようかな〜」


これから。

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