第23話 神狼の母娘

前回のあらすじ:狼を正気に戻した。


「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ…、はぁーーーーっ」


無意識に息を止めていたらしい。


『こんばんは、精霊の神子みこさん』

「はは…、こんばんは…、フェンリルさん…」


いくつしみの瞳で俺を見る狼。


『攻撃してしまって申し訳ない…。何かおびにできることはありませんか?』


特殊とくしゅクエストが発生しました!受注しますか?YES/NO》


「YES」


もうどうにでもなったらいいよ、後には戻れなさそうだし。


《詫びとして要求することを選んでください

 10,000,000チコル

 《神狼フェンリルの加護》

 次期フィールドへの移行パス

 いりません              》


「あ、いらない」


特に何かくれっていうつもりはない。

パスもいらない。

加護はもうイヤってぐらいもらってる。

お金は……、稼げるし。


やさしい子ですね。お礼に、私が守りたかったものを見せましょう』

「守りたかったモノ?」


狼についていくと、少しひらけた場所に出た。

平たい岩の上に、狼が2匹横たわっている。

フェンリルと似た…、というか同じ姿をした黒い狼だ。

でも幾分いくぶんか小さい子狼って感じだな。


『私の娘たちです。同じく、瘴気しょうきに侵されている……』

「精霊さん、浄化」

〔〔はいっ!〕〕


問答無用もんどうむよう、すぐさま浄化する。

うむ。瘴気、悪いモノ!

驚いたような神狼フェンリルの視線を感じるが無視。

雪花の視線も感じるがそちらも無視。


『あ…、おかあ…さん…?』

『ん…』

『っ!』


感動の再会(?)だな。

………、かわいい。ふわふわのもふもふ。

はっ!いけないいけない、相手は伝説のフェンリルだぞ。


『我が娘たちを治してくれて、感謝します。なんと言ったらいいのか…』

『あっ!はいはいはいはいはいはい!!』


雪花が何か言い出す。


『ちょっとこっちきて…』


俺から少し離れたところでコソコソ。

内緒話ないしょばなしですか。


『つま…、わ…しが…いさん…じゅ…ま…な…ば…』

『そ……う…な…なら、む……さん…いっしょ…ど…?』


俺ってば弾かれてる。

ちょっとかなしい。

あっ、狼ちゃんたち。

なぐさめてくれてるの?ありがとう。


『おーい』

「雪花。話は終わったか?」

『フェンリルさんたちが、一家全員従魔いっかぜんいんじゅうまになるってー♪』

「………」


ジュウマ。

え?

フェンリルさんちが?

チョットリカイデキナイ。


「………。うん、わかった。」


俺は楽しむためにこのゲームを始めたのだ。

なにも支障ししょうはない。

3匹の前に行って唱える。


「《契約》」


《New! フェンリル×3との契約が成立しました》

《New! レベルが上がりました!》

《New! レベルが上がりました!》

《New! レベルが上がりました!》

《New! 称号・伝説との絆を獲得しました!》


それじゃあ。


「名前をあげよう」

『はい』


3匹が尾を振る。


「お母さんが天花てんか、お姉ちゃんの子が白華しらはな、そして、君がうらら


こうして、俺には仲間が増えましたとさ。

ちゃんちゃん。

なんちゃって。

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