第8話 アバウト気質なセイくん

前回のあらすじ:蜘蛛と狐と俺。

        イロイロとカオスな現場。

        狐と一緒に蜘蛛から逃げるよ!


『セイってさー、何気なにげに「ま、いっか」が口癖くちぐせだよねー』

「え、そう?」


俺と狐は、てくてくと街に向かって歩きながら話した。


『そういうのをね、アバウト気質きしつっていうんだよ』

「知ってる。言われたことある。」


クモが出てきても素通すどおりOK。


「そういえば…この耳って目立つよな」

『あー、確かに。たしか、混血こんけつって珍しいからね。

 しかも能力的のうりょくてきにも強いから絶対に引っ張りだこになるね』

「だよなー」


はぁっとため息をつく。

あー、やだやだ。


『何か倉庫ストレージに入ってないの?』

「え?あっ、そうか。見てみる。」


〜〜*-*-*〜〜〜

倉庫:《草神精霊そうしんせいれい守護結晶しゅごけっしょう

   《光神精霊こうしんせいれい守護結晶しゅごけっしょう

   《火神精霊かしんせいれい守護結晶しゅごけっしょう

   《風神精霊ふうしんせいれい守護結晶しゅごけっしょう

   《土神精霊どしんせいれい守護結晶しゅごけっしょう

   《初心者装備一式しょしんしゃそうびいっしき

   《神子服一式みこふくいっしき

   《ローブ》

〜〜*-*-*〜〜〜


「あっ!!!!」

『何?何が入ってた?』

「ローブ!これだ!」


素早すばや選択せんたくしてオブジェクト化する。

現れたいかにも初心者しょしんしゃっぽい素朴なローブを見に纏い、頭まですっぽりかぶる。


「これで見えない!もし見えても牙だけだから吸血鬼きゅうけつき日光にっこうけるためにローブをかぶってるって思われる!」

『わお、それはいいね!』


褒められて悪い気はしないのでふふん、とドヤ顔を決めておいた。


「さあ、急ごう」

『うん』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あっ!」

『うん?』

「お、俺、ちょっと気づいちゃったんだけど………」


隣を歩く狐が顔を上げる。


「もしかして、狐って門番もんばん敵視てきしされるんじゃね?」

『はっ!』


そうだ。

狐は魔物まものなのだ。

知能ちのうはあるが、俺が《言語解読》で声が聞こえても門番には聞こえない。

故に。門で止められて、最悪、られるんじゃね?

と、いう思考である。

…………………ありそうじゃね?


『やっば!セイと一緒にさりげなく街に入ってクモから永遠にアディオスする予定だったのに!!』

「お前なんでアディオスなんて言葉知ってんの?」


あれ?狐ってクモ食べるんじゃなかったっけ?


『よし!セイ!』

「なに?」

契約けいやくしようぜ!』

「は?」


ケイヤク?

契約って、あの契約!?


「え、でも、それは…」

『いーから、ほら、早く!』


えぇい、ままよ!!


「《契約》ッ!」


カッ!


『わー!!』

「ま、まぶし!」


え、何!?

何か違った!?

間違えた!?


「あ…」


やっと光に目が慣れてくると、ウィンドウが見えた。


《New! スノーフォックスとの契約が成立しました!》

《New! レベルが上がりました!》

《New! レベルが上がりました!》

《New! 称号・獣と友好を結びし者を獲得しました!》

《New! 称号・【テイム】の先駆者せんくしゃを獲得しました!》

《New! →スキル・【水流操作すいりゅうそうさ】を獲得しました!》


『これでよし!』


狐は俺のマントの内ポケットに入り込み、嬉しそうに言った。


『これからよろしく、セイ!』

「あ、あぁ…」


なんだか流れに載せられたような気がする。

昔姉に言われた言葉を思い出す。



──星斗、あんた、押しに弱すぎるよ。



あぁ…姉さん、たしかに俺は押しに弱いかもしれない。

でも…


「ま、いっか」


風が一陣いちじん、歓迎するように俺のほおを撫でた。

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