茶釜③

第32話 安心感

『AKIRA』ことポットになって。


 茶釜だけど、『ポット』って名前になって……だいたい三日目。


 エルフ芸妓のミディアちゃんのお家に厄介になっているんだけど。お湯を沸かす以外は、衣食しなくていいから楽ちんだわ。楽しみは、ミディアちゃんとお話することね?


 今日は、ちょっとぶりに……あの茶室があるツリーハウスに行くことになったの。


 ミディアちゃんが茶人として、おじいちゃん神様にお茶を振る舞うためなんだって。


 外見だけしか、あのおじいちゃんが神様には見えないんだけど。



「ほな、行くで?」


『はーい』



 アタシは相変わらず自分で動けないから、ミディアちゃんに抱えられないと移動とか出来ない。


 今更だけど、茶釜ってゴツい上に金属だけだから重いはずなのに……ミディアちゃんはひょいっと抱えられるのよね?



「ん?」



 アタシが黙ったのが気になったのか、ミディアちゃんはアタシを見下ろしてきたわ。



『ううん。ミディアちゃん、細身なのに力持ちさんねって思ったの』


「……ああ。うちは、重いもん運ぶ仕事多いからなあ? 慣れや慣れ」


『アタシくらいに?』


「せや。ものによっては着物って重いんやで?」


『なるほー』



 それなら納得だわ。


 んでもって、飛行魔法でゆっくりゆっくりあのツリーハウスに行ったんだけど。まだ、おじいちゃん神様は居なかったわ。


 つまり。



「ほな、準備するで?」


『……はーい』



 アタシ……と言うか、茶釜だけど。


 ちゃんと本来の使い方をするのに、囲炉裏に炭火がついたら……アタシはごとんと置かれた。


 ちょっとずつ、あっちぃわ!?



「うちは準備してくるから、しばらくここでな」


『……わかったわ』



 ぽつねんとなっちゃうけど……完全にひとりじゃない。


 それがわかっているからか、随分と気持ちが楽。一応、前世ではひとり暮らしとかしてたのにねぇ?


 相手はエルフでも女なのに……アタシも随分と絆されたわ。

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