第31話 再び使用



「なぁんも気にしんととは言えんけど。ポットはきちんと仕事もやけど、客を大事にしとったんやろ? せやったら、うちもとやかく言わん」


『……ありがとう』



 いい子過ぎるわぁ。


 アタシの美しさに、取り合いしてたナンパとかの女どもとは全然違う!


 元のアタシ以上に美しいし、中身もすんばらしいわん!!


 頷くとかしたいけど、茶釜のまんまじゃ無理だから言葉だけで返したわ。



「大したことしとらんけど。せや、うちのど渇いたんや。……湯沸かしてええ?」



 あ、本当にアタシ使うのね?



『……いいけど。一個聞いていい?』


「おん?」


『魔法あるのに、魔法でお湯作っちゃダメなの?』



 これ、飛んでた時にちょっと疑問だったのよね?


 アタシが聞くと、ミディアちゃんは首を縦に振ったわ。



「せやな? 人間ほどではないんやけど、頼り過ぎちゃあかんようには慣習で制限があるんや。なんでもかんでも魔力頼りにしたらあかんってな」


『……自炊とか出来るように?』


「そんな感じや」



 なるほど。魔法でぽんぽん出来たら、自炊力が落ちるって感じかしら?


 で、アタシは承諾したから……使われるのに、コンロみたいな場所に連れて行かれたんだけど。



『あっつ!?』



 直火じゃなくて、炭火だけど……やっぱりあっついわぁ!!?



「すまんなぁ。あんまり、炭火は調整しにくいねん」


『だ……じょぶ、よ』



 パン釜とか、釜戸よりは……耐えられる。なんとか。


 内側に入れられた水がぼこぼこ沸いてきたら、ミディアちゃんはすぐにアタシをコンロから外してくれたわ。



「……ポットは飲めれんやんな?」


『……多分、無理ね』



 目と鼻は機能があるようだけど……口は相変わらずないのよねん?

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