第30話 お互いの職業

 あちこち眺めていたけど、飽きないわねぇ?


 和風モダンはもちろんだけど……日本と似ているようで全然違うものもあったりとか。


 綺麗な着物が立て掛けてあるのには、興味爆盛りよん!!


 金糸もあるけど……銀以外にも刺繍の糸が高価なもの間違い無し。赤と青、黄色がちょうどよく使われている柄は……蝶々。


 ミディアちゃんに相応しい着物ねん。


 さっき着ていた着物は牡丹柄だったけど、めちゃくちゃ似合っていたわ。



「声もせんかったが、大人しいなあ?」



 ミディアちゃんが戻ってきたわ。


 和服……かと思ったけど、ファンタジーぽい緑色の服装。


 女だから、胸凄いわね!? アタシがゲイでもドキドキするわん!!



『え……えっと、そこの着物見てたの』



 手はないから、だいたいの位置を口で伝えると……ミディアちゃんは綺麗で柔らかい微笑みを浮かべたわ!? 余計にドキドキするじゃないの!!



「それな? うちが仕立てたんよ」


『仕立て……え? ミディアちゃんが作った??』


「せや。うちの仕事は、茶人以外に紡ぎ人やねん」


『……つむぎ?』


「糸から何から、最初から服を作るんや」


『全部!?』


「そうや」



 魔法か何かは使うにしても……一から糸を紡いで仕立てあげるだなんて、物凄い労力じゃないの!?


 こんなにも華奢な女性が出来るだなんて……びっくり仰天だけで済まないわ!!



『……凄いわね』


「おおきに。んで、ポットは憑依前は何しとったん?」


『あ。あー……』



 ちょっと、いいえ、かなり。


 言うのをためらうわん。


 だって……ミディアちゃんに比べたら。


 アタシって、水商売だし……表立って胸を張れる職業じゃなかったし。


 でも……お世話になるんなら、言うしかないわね?



「うん?」


『ミディアちゃん……男でも男と恋愛するのってわかるって、言ってたわよね?』


「せやなあ?」


『……それを、ちょっと商売にすることをしてたの。ゲイホストって言うんだけど』



 言っちゃったけど……ミディアちゃんはどう思ったかしら。


 恋……ではないと思うけど。好意を感じている相手には、変に思われたくない。それは本当だった。


 ドキドキしながら待っていると、ミディアちゃんは首を傾げたわ。



「悪いことなん?」


『へ?』


「別にポットは悪いことしとったわけちゃうやろ?」


『……まあ』



 客を喜ばせていたのは、きちんとしていたつもりだったし。客同士がアタシを取り合うのはともかくとして。



「せやったら、ええやん。負い目を感じるのは良くないで?」


『ミディアちゃん!』



 いい子過ぎるのわ、この子!!


 ちゃんと目があったら、ちょちょぎれていたわ!!

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