水頭症について

 もう一つ、脳の構造と機能、それに治療法についても今のうちに簡単にまとめておきたい。


 僕もあまり詳しくはないのだが、脳には大きく分類すると以下の部位が存在する。

  ・大脳

  ・小脳

  ・海馬

  ・脳幹

 脳は頭蓋骨の中に溜まっている髄液に浮かんだ状態で存在しているのだが、この髄液は脳の周囲の他、脳の内部にも溜まっている。

 これが規定量(約150ml)よりも多くなってしまう病気が水頭症だ。

 ちなみに髄液は一日に概ね500ml分泌されると言われている。つまり、脳の周りと中を満たす髄液は一日に三回交換されているわけだ。

 大脳はおおむね思考をつかさどり、海馬が記憶に関係する。そんで小脳は運動機能ね。

 水頭症はこの脳全体に圧がかかって脳が機能不全を起こす病気なので、思考力にも運動能力にも、あるいは記憶にも影響する。

 流石に脳幹に影響が出ることはないと思う。死んじゃうからね。

 まあ、豆知識として覚えておいても損はない。


 さて、この大脳には左右の側脳室、第3脳室、第4脳室という四つの大きなお部屋があるのだが、水頭症の治療のためにはこの側脳室にパイプ(シャント)を通して溜まった髄液を腹腔内に排出する。

 大きく分けてこれには三種類あるようだ。

・VPシャント(脳室-腹腔短絡術):今の主流で、多くは右側の側脳室にシャント(パイプ)を通し、これを皮膚の下を通過して腹腔に逃す。流れてきた髄液は腹腔内で自然に吸収される。

・LPシャント(腰椎-腹腔短絡術):こちらは脳には侵襲せず、腰から腹腔に向けてシャント(パイプ)を伸ばす。こちらも髄液は腹腔内で自然に吸収される。

・VAシャント(脳室−心房短絡術):こちらはVPシャントと似たように脳にシャント(パイプ)を通し、心房内に髄液を排出する。ただ、こちらは日本ではあまり行われてはいないようだ。


 どの方法もシャントの途中には可変バルブがあって、これで流量を調整する。流量を絞ってしまうとなんのために手術したのかわからなくなってしまうし、逆に流量過多だと低髄液症を起こして、頭痛やらめまいやらが発生するらしい。

 そのため、手術を受けたのちは定期的にバルブの調整を行う必要があるようだ。特にMRIはバルブを動かしてしまう可能性があるため、MRIとバルブの調整はセットになっている、んだと思う。よく知らんけど。


 これとは別にもう一つ、ETV(内視鏡下第三脳室底開窓術)という少々過激な治療法もあるようだ。これは内視鏡を使って第三脳室の壁に小さな穴を開け、過剰な脳脊髄液が正常な脳脊髄液腔の一つに流れていくようにするらしい。でも、なんだか怖いよね。


 ところでグーグル先生によればこの水頭症(突発性正常圧水頭症)は『一般的に、65 歳以上の高齢者において、認知症と診断された患者の 5〜10%が特発性正常圧水頭症であると考えられている』、らしい。

 でもこれじゃあ何がなんだか訳わからんと思ってもう少し掘り進んでみたところ、有病率のデータがあった。それによれば『有病率は0.2~2.9%,罹患率は年間およそ120/10万人と推定』なんだそう。

 つまり、年齢を加味せず計算すると概ね1000人に一人が発症するということになる。

 実は認知症の原因の一つがこの水頭症だと最近わかってきたみたいで、認知症だと診断された時には水頭症の検査もするようだ。

 老人が認知症的な挙動を示すようになったら、とりあえず病院に行っても損はない。仮にその認知症が水頭症由来のものだった場合、シャント術を受ければ治るからね。

 シャント術の手術時間は概ね一時間、侵襲度も低いので比較的ローリスクな脳外科手術だと認識されているようだ。

 むしろ、体表をシャント(パイプ)が走るようになるため、転倒などに注意した方がいいらしい。シャントはシリコンとプラスチックでできているそうなので、交通事故とかでは壊れる可能性がある。


 ともあれ、これで誰でもかかる可能性がある病気だとおわかりいただけただろうか?

 水頭症(突発性正常圧水頭症)は決して他人事ではないんだよ?

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