第7話 魔力階位②
その後も貴族の子供たちは次々と【賢者の杖】に触り、〝第三級〟〝第四級〟などと魔力階位を判定されていく。
当の子供たちは判定を言い渡されても「?」という顔だが、親たちは一喜一憂。
特に〝第四級〟を言い渡された子の親はかなり落胆した様子だった。
もしかすると〝第四級〟が最低階位なのかもしれない。
そしていよいよ、バルベルデ公爵たちの番が回ってくる。
「次に……バルベルデ公爵家」
「はっ!」
バルベルデ公爵は威勢よく返事すると、子供の背中をポンと押す。
「行ってこい、ピサロよ。恥を晒すんじゃないぞ?」
「はい、ちちうえ」
他の子供たちとは異なり、ピサロというバルベルデ公爵の息子は一人で壇上まで上がっていく。
自立してる――というかしっかり教育されている感じか。
そしてピサロは【賢者の杖】に触れる。
すると――水晶は
瞬間、広場に今日一番のどよめき起こる。
「〝第一級〟の魔力階位じゃ。素晴らしい魔力じゃのう」
「いえいえ、これもバルベルデ公爵家の血なれば当然かと……」
得意気になって答えるバルベルデ公爵。
胸を張るべきアンタじゃなくてピサロの方だと思うが……。
しかしまあ、バルベルデ公爵がその爵位に留まっていられるのも偶然じゃないってことか。
それだけ血統が優れていて、多くの魔術師を輩出できてるって証拠だもんな。
悔しいが認めざるを得ない。
「では最後となってしまったが……スプリングフィールド家」
「はい」
――貴族たちの視線が、一斉に僕たちへと注がれる。
「どうなるだろう?」という奇異の目、
「どうせ最低階位に決まってる」という侮蔑の目、
「いや、もしかすると……」という僅かな期待の目、
いやはや……ジロジロ見られるのは気分がよくない。
「……行こうか、リッド」
「父様、僕一人で行くよ」
「え? だけど――」
「大丈夫」
手を引こうとする父を制止し、一人で壇上まで上がっていく。
そして【賢者の杖】の前に立った。
「「「…………」」」
シン、という静寂。
テオドール校長も黙ってこちらを見つめる。
――目の前にそびえ立つ、自分の背丈よりも長い杖。
なんだかプレッシャーを感じる。
「すぅー……はぁー……」
深呼吸。
一度しっかり呼吸を整える。
……どんな結果が出ても、みっともない真似はしないぞ。
〝第四級〟でも取り乱すもんか。
スプリングフィールド家の名を――父をこれ以上、馬鹿にされてたまるか。
そう思って、僕は杖を握る。
すると――水晶が光り輝いた。
――――
「こ、これは……!?」
あまりにも眩しい黄金の光。
それはさっきまでの赤色や青色の光とは全く比較にならない、まさに閃光。
「あ、あれはなんだ……!?」
「こんな色の光は見たことがないぞ……!」
「うぇーん! 怖いよぉー!」
広場の貴族たちからは驚きの声と悲鳴が上がり、子供たちは泣き出してしまう。
「……うむ、もう手を放してよいぞ」
「え? あっ、は、はい!」
テオドール校長に促され、僕は慌てて【賢者の杖】から手を離す。
途端に黄金の輝きを失う水晶。
貴族たちの間にはまだ動揺が広がっているが、
「……期待通りじゃったな。百年来の逸材が現れた」
彼らとは対照的に、テオドール校長はとても嬉しそうに笑っていた
「リッド・スプリングフィールドよ……貴公をルークの再来、〝特級〟の魔力階位と認める」
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