第6話 魔力階位①
「テ、テオドール・ヴァルテン閣下!」
「こらこら、校長と呼ばぬか。閣下なぞ堅苦しい……」
現れた老人を見て、父もバルベルデ公爵も驚いて姿勢を正す。
どうやら彼が魔術学校の校長先生らしい。
その傍には黒いローブを着た魔術師らしき者が二人付き添っている。
――エルフ。
あのテオドールって校長、どう見てもエルフだ。
長く伸びた白髪と顎髭、
白いローブ、
高い背丈、
そして細長く尖った耳……。
明らかに他の貴族たちとは異なるオーラを放ってるよ。
思わず僕の姿勢までピンとしちゃった。
「……バルベルデ公爵よ」
「は、ははっ!」
「ゲオルク・スプリングフィールドの子、リッド・スプリングフィールドは間違いなく彼の実子じゃ。報告はベルトレ卿から受けておる」
「さ、左様で……」
「それから子供たちのいる前で下世話な話は褒められぬな。以後慎むように」
「も、申し訳ありません……」
冷や汗を垂らしながら謝罪するバルベルデ公爵。
どうやら公爵という立場でも、テオドール校長には頭が上がらないらしい。
テオドール校長は次に僕と父の前まで歩いてくると、
「……百年ぶりか、スプリングフィールド家の者をここで見るのは。懐かしいのう」
ゆっくりと膝を曲げ、しゃがみ込んで僕と視線を合わせた。
「ベルトレ卿から聞いたぞ、坊やよ。どうやらお主は少々特異な体質のようじゃな」
「そう……なんですか?」
「うむ、思い出すのう。かの英雄、ルーク・スプリングフィールドのことを」
――ルーク・スプリングフィールド。
その名前が出たことに父は驚き、
「! 我が先祖をご存知なのですか!?」
「勿論。伊達に長生きはしておらんからな、ホッホッホ」
……貴方、いったい何歳なん?
エルフって長命って聞くけど、その感じだとこの世界でも同じっぽいな……?
「キミにも彼の力が受け継がれているかどうか……今日は面白いモノが見れるといいのう」
最後にそう言い残し、テオドール校長は立ち上がって僕の下から去っていく。
そしてベルトレ卿や付き添い人を引き連れて壇上まで上がり、広場に集まった貴族たちを一望した。
「諸侯貴族の皆様方、本日はお集まりいただき感謝申し上げる。それではこれより、【賢者の杖】にて各子息の魔力測定を行う」
テオドール校長が言うと、付き添い人が布に包まれた長い棒のような物を抱えてくる。
それを台のような場所に固定し、おもむろに布を剥がした。
すると露わになったのは――先端に巨大な水晶のような石が付いた、古い木製の杖。
「では順番に触れていってもらおうかの。まずはガーデン侯爵家のご子息から」
テオドール校長に呼ばれ、一組の貴族父子が壇上へと上がる。
そして父に促され、まだ幼い子供はぺたっと杖に触れた。
すると――杖の水晶が
「ふむ、〝第二級〟の魔力階位じゃな」
直後、「おぉー!」と広場から歓声が上がる。
魔力階位――っていうのは初めて聞いた言葉だ。
なんだろ、魔力の強さをランク分けしてるとか、そういう感じなのか?
まあいくら魔力が血統に左右されるとは言っても、個人差は出るだろうからな。
潜在能力の最終確認みたいなモノかもしれない。
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