第6話 男と闘う私
男性と闘ってはダメだ。そう強く感じたのは、社会人になってからだった。
言い訳にしかならないけれど、私の母は教育熱心な親で、90点取ったテストであと足りない10点のことでよく怒られた。でもさ、学校のテストなんて7割取れれば上出来じゃない? なんて今は思うんだけど。当時の私は、テストの点数にものすごく神経質になっていた。赤点を取ったのは、センター試験本番の数IIBが人生で初めてだったけれど。国語の文字数制限問題とか数学の証明問題で100点を取るのなんて遥かに難しいのに、それでもテストの度にショックだった。でも、クラスに必ずいるのである。いつも余裕そうに90点以上をかましてくる男が。すごいなと思うと同時に、どうしようもない劣等感を抱いた。
それから、幼稚園の時も小学生中学年の時も、クラスの男の子にいじめられた。中学生の時は、体型のことでよくからかわれた。小学生の頃は私のことブスと言っていた男の子が、私が髪を伸ばして制服のスカートを履いてそこそこ女子っぽく見えるようになってから、急に優しくなった。悔しかった。絶対にいい意味で見返してやりたいと思った。それがバネになってか、高校はそこそこの自称進学校に行けた。今考えるとその点だけはちょっとだけ感謝かもしれない。いや、本当にほんのちょっとだけね。
高校生になって、テストの順位が張り出される。得意な教科、苦手な教科。色々あるけど、せっかく上位にランクインして順位表に載ったのに、それを遥かに越えて載っていた男子がいた。その人は悪くないはずなのに、何故か無性に腹が立った。絶対に勝ってやりたいと一人で闘争心を燃やした。時間を無駄にするのがもったいなくて、休み時間も部活前も一人で単語帳を読んでいた。まあ、結局その子には最後まで勝てなかったけどね。
今思えば、そういう人たちも努力して昇ってきたのだと思う。その頑張りは賞賛に値すると思う。でも、全然苦労の影が見えないから、頭良くてうらやましいなあ。と思った。
大学生になって、文芸部に入った。編集者に男の先輩がついて、重箱の隅を突くような指摘をしてきた。趣味で書いてるからいいじゃん、と心の中でぼやいた。結局耐えられなくなって、それ以降は女子たちに編集をお願いした。やっぱり趣味が似てると女子同士の方が盛り上がるよな、と思った。
で、社会人になっても私の男の人に対する闘争心は止まなかった。MRの勉強で同期の男子に対する絶対に負けたくないって気持ちはいつもあったし、教会でいつも頑張っている男子に対しては尊敬はするものの、やはり劣等感が勝って絶対抜かしてやるからな、と思った。まあ、結局その子に勝ったことなんて過去に一度もなかったけどさ。
ということで、今に至る。どうすれば男性に対する劣等感と闘争心を昇華できるのか。私の悩みは解決しない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます