第5話 男になりたかった私

※以下、ちょっとドロドロというか生々しい表現があります。ご理解いただけた上でのご閲覧お願いします。

 

 時々、男に生まれたかったと思う瞬間がある。それは、小さい頃からそうだった。女の子と話が合わなかった時かもしれないし、泣いてる女の子を見た時かもしれないし、母が父の愚痴を言って辛そうにしてた時かもしれない。私が男だったら、絶対に女の子にそんな思いはさせないのに。と思った。

 彼氏が欲しいと思ったことがある。でも、自分が男だったら、女の子をエスコートできたのかな、と思う時もある。悪い男から女の子を守りたいと思ったこともある。自分が女らしく振る舞うことに抵抗があった時代もある。一人称を私から俺に変えたこともある。

 失恋した時、自分が女らしい女じゃないからかな、と思った。もっと可愛げのある女だったらよかったのにな、と思った。それから、自分が男だったら、こんな切ない思いをしなくて済んだのにな、とぼんやり考えたりする。

 「男」にも「女」にもなれない、中途半端な自分が許せなかった。女らしい服装をして、女らしい髪型をして、女らしい言動をすれば、ちゃんと「女」になれると思っていた。でも、違った。女として見られるのが許せなかった。女として接せられるのが許せなかった。

 女じゃなくて、「私」になりたいと思った。男でも女でも許される、そんな「私」になりたかった。

 あと何年生きれば、この葛藤から逃れられるんだろう。私は「私」になれるんだろう。

 いつになったら、私を「私」として見てくれる人に出会えるんだろう。その時、私はちゃんと「女」になれるんだろうか。

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