第31話「魔導通信ログ:秘匿/ダンジョン対策室」
RL(一号):「シンラ、聞こえる?」
夜刀(六号):「あ、聞こえる」
コン太:「きっこえるぞー!」
夜刀(六号):「コン太がいなかったらたぶん聞こえてない」
RL(一号):「本当にすごいね、シンラの秘書獣」
コン太:「えっへん!」
夜刀(六号):「それで、急にどうしたの?」
――システム:沈黙。次の通信をお待ちください。
RL(一号):「ええと、先日の一件からゆっくり話をする時間が取れなくて。今どうしてるかなって」
夜刀(六号):「おかげさまでいろいろ整理ができたよ。俺が戻ってきた初日に寝ることができたのも、こうして情報を整理することができたのも、アールシャが裏でいろいろやってくれたんでしょ?」
RL(一号):「あー、うん、でもそれくらい許されないとさすがにね。基本的に特務官は最初からフルスロットルで馬車馬になるから忙しないまま気づいたら染まってたみたいなことが多いんだけど、シンラは中でも一番ひどかったから」
夜刀(六号):「あっ、そうなんだ……」
――システム:通信障害。魔力の流れが乱れています。しばらくお待ちください。
RL(一号):「あ、ごめんごめん。――それで、いろいろと踏まえたうえで、シンラはこれからどうしたいかなって。一応、無理をすればシンラの特務官着任をうやむやにできなくはない」
夜刀(六号):「あはは、それはものすごい無理をしそうだね」
――システム:沈黙。次の通信をお待ちください。
夜刀(六号):「アールシャ、俺は特務官を続けようと思う。たしかにめちゃくちゃブラックだし、正直前の世界の俺ならとっくに灰になっていておかしくないと思うけど、実際にダンジョンを経験して、いろんな資料を読んで、あと、ほかの職員と関わってみて、やってみようって気になったんだ」
RL(一号):「ほかの特務官が聞いたら心配されそうなセリフだね」
夜刀(六号):「はは、俺の理性もそう言ってるよ。――でも、俺が力になれるんだって、思えたから。そしてそれが、おもいのほか嬉しかったんだ。あ、もちろんうぬぼれてるわけじゃないけど……」
RL(一号):「シンラはもっとうぬぼれた方が良いよ。すでにそれくらいの活躍はしてるし、先日の大変動ではシンラがいなかったらたぶん私は死んでいた。シンラは命の恩人さ」
夜刀(六号):「なんかアールシャに言われると畏れ多いなぁ」
――システム:通信障害。魔力の流れが乱れています。次の通信をお待ちください。
RL(一号):「じゃあ、改めて特務官を続けるって認識でいいかな」
夜刀(六号):「いいよ。まだ右も左もわからない状態だけど、できるだけ早く戦力になれるよう頑張ります。よろしくお願いします」
RL(一号):「あはは、そんなかしこまらなくていいよ。ガルンあたりにもそう言われただろう?」
夜刀(六号):「ああ、そういえばそうだった。時間と労力の無駄だって」
RL(一号):「まあそういうのを重視する課もあるけどね」
――システム:通信障害。魔力の流れが乱れています。次の通信をお待ちください。
夜刀(六号):「ところでアールシャさん」
RL(一号):「ん?」
夜刀(六号):「今どちらに? さっきから通信が乱れてるっぽいんだけど」
RL(一号):「ああ、私は今ダンジョンの中だよ。大変動後の18階層のマッピング中。たぶんここ〈神域〉だね」
夜刀(六号):「あっ……」
RL(一号):「魔力の流れが安定しないのはたぶん――あ、十三怪異物だ」
夜刀(六号):「えっ」
RL(一号):「今度は〈青い死神〉かぁ……。しまったなぁ、蘇生官足りるかなぁ……」
夜刀(六号):「あの、俺になにかできることは……」
RL(一号):「へるぷみー」
夜刀(六号):「とりあえず向かいます」
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