第二章:職場環境と愉快な仲間たち

第10話「公僕六号のダンジョン日記 P4~P6」

日付:13月31日

場所:〈結晶深淵窟:程度【神域】〉


 アールシャの言っていたとおり、財政課からの指示で俺たちは第1階層〈結晶深淵窟〉の鉱石をひたすらに掘っては運び、掘っては運ぶことになった。

 なお現在四徹目。

 水場があったので自分の顔を映してみたら目の下にくまがあった。

 でも不思議なことに眠気が来ない。

 これも疑似神族とやらにいじられた影響だろうか。


◆◆◆


日付:13月32日

場所:同上


 本日、はじめて俺はアールシャ以外のダンジョンへの探索者を見た。

 アールシャ曰く、ダンジョンの大変動とやらのいちおうの終息を確認し、民間の探索士への探索許可が下りたらしい。

 とはいえ、すべて自由というわけではないらしく、彼らはこの階層へ入ってくるやいなや俺たちと同じく洞窟の鉱石を掘り出しはじめた。

 なんでも、大変動直後は行政側から探索指示が出されるらしく、それを遵守しないといろいろ罰則があるとのことだ。


 〈メモ〉

 【大変動】:ダンジョンの構成が切り替わること。誰かの意志に基づくものではないため、多少の予測こそできるものの、時期、程度、ともにほとんどランダム。

 ダンジョン内に探索士がいるときにもこの大変動は起こるため、逃げ遅れると時空の彼方に飛ばされる。

 また、大変動直後は民間の探索士に探索禁止令が出され、まずダンジョン対策室の特務官によって先行調査を行う。


◆◆◆


日付:13月33日

場所:同上


 13月はいつ終わるんですか?

 そしてこの鉱石掘りはいつ終わるんですか?


 民間の探索士と鉱石掘りをしていくなかで、自然とそれぞれの役割分担がなされていった。

 ファンタジーよろしく民間の探索士にはさまざまな見た目の者たちがいたが、言葉は通じるし、このクソみたいな作業を延々と続ける中で妙な連帯感が生まれ、結構仲良くなった。

 ちなみに俺の役割は岩盤砕き係。

 素手で、硬そうな岩盤を、砕く役。

 人を掘削機代わりにしないでほしい。

 ……とはいえ、これも仕事を早く終わらせるためだ。

 ……この仕事ってちゃんと終わりあります?


◆◆◆


日付:13月34日

場所:同上


 おれ、いわ、くだく。

 きらきらした石、ひろう。


◆◆◆


日付:13月35日

場所:きらきら


 いわ……いし……

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