4)第一王子の秘密


 隣国の第三王子カークと別れ、ラルフの自室に戻ります。



 レモンが、ディナーを持ってきてくれました。



「明日、急ですが御前会議が開催されます」


 私たちの爵位はく奪と、追放を決議するのでしょう。

 その前に、なんとかしなくてはなりません。


「こちらには、切り札がありませんね」

 困りました。


「仕方ない、明日、クーデターを起こす」

 第二王子が、決意しました。

 クーデターを起こすということは、彼は家族に剣を向けるという事です。


「レモン、隣国のカークに、御前会議に合わせて王宮で待機しておくよう伝えてくれ」

 彼女は、心配顔です。


「心配するな、約束は必ず守る」

「そうではなく、カーク様の身は安全なのですよね?」


「そっちか、カークは巻き込まない、大丈夫だ」

「良かった。では、爵位の件、約束は守ってね」


 彼女は、カークに惚れているようです。



「待って、このメモを、お父様に届けられないかしら」

 私は、レモンにメモを渡します。


「わをん?」

 レモンと第二王子が、不思議がります。


「これは我が家に伝わる、、、秘密の言葉です」

「これを見たら、父は何も問わずに、貴女を帰します」

 もう後がないことを示す、重要な暗号です。



「分かりました。王宮の帰り道、届けます」


 彼女が部屋を出ると、また、二人きりの部屋です。




 第二王子が、棚を開けて、何か取り出しました。


「この水晶玉は、魔道具だ。念じた人物の、今を映し出すことができる」

「動かすには強い魔力が必要だ。ピーチの力も貸してくれ」


 彼は、第一王子の動きを監視したいようです。



 二人が向かい合って、水晶玉を手で包みます。

 指先が触れて、照れくさいです。


 政略結婚が無ければ、私は第二王子と婚約していたでしょう。学園時代の淡い恋心を思い出します。


 …その二人が、部屋に二人きりというのは、危険な香りです…



「水晶玉、兄の第一王子を映してくれ」



 なんと、水晶玉に映し出されたのは、地下牢に横たわる第一王子です。



「「え?」」



「兄に、何が起きているんだ?」

 第二王子は、理解が追いつかないようです。状況が分からないのは、私も同じです。


「会いに行けば、わかりますよ」

 こうなれば、当たって砕けろです。



   ◇



 次の日、兵たちの目が、御前会議へと向いている隙に、地下牢へ向かいます。



「ここは秘密の地下牢なのに、兵がいませんね」

 ここは、政治犯など、公にできない犯罪者を、人知れず監禁する秘密の地下牢です。


 誰にも会わずに、ここまでたどり着きました。


「監視の兵がいないなんて。王宮が変わってしまった」

 第二王子は、疑問を深めているようです。


「王族ではない誰かが、王宮を支配しているようですね」

 私の言葉に、彼は苦渋の顔になります。同じことを考えていたようです。



「カギは、ここです」

 隠し場所の机の裏から、独房のカギを取り出し、第二王子に渡します。



 カチャッ



 第二王子はカギを開け、慎重に開いていきます。


「兄上?」

 倒れている人物に、小声で話しかけます。


「…ランドルフ…なのか?…」

 ゆっくりと体を起こした人物、やはり第一王子です。



「…影武者から、裏切られた…」

 第一王子が、経緯を話し始めました。


 まとめると、自分にそっくりな影武者を利用していたが、影武者から薬を盛られ、独房に閉じ込められたとのことです。


 影武者は、捕まえた犯罪者の中から、王族に似ている者を選び、作り出します。もともと、忠誠心などありません。


 第一王子は、薬の影響か、今も体調が悪いようです。



「…父上と母上も、どこかに幽閉されている…」

 うわ、これは考えていた以上、最悪の事態です。



 御前会議にいる王族3人は、影武者でしたか。別人と感じたのは、本当に別人だったからですね。



 顔を隠して、兵を呼びます。


「これは、第一王子様!」

 兵が驚きます。


「急いで、御前会議にお連れしましょう」

 兵に第一王子を支えさせて、廊下を急がせます。


 私たち二人の正体には、まったく気が付いていません。どうなっているんでしょうか、この王宮の警護は?



 さて、一か八かの突撃クーデター作戦だったのですが、本物の第一王子という切り札が手に入りました。


「面白くなってきました」



(次回予告)

 切り札を手に入れたピーチ。

 次回は、いよいよ突撃です。二人にどんな結果が待っているのか!


あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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