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入学式を終え、家に帰る。

家に帰ってから、すぐに中学の時の体育着に着替えた。

それから家事をしたり、翌日以降の高校の準備をした。





少し暗くなってから、お母さんが朝にくれた500円玉を握り締め家の扉を開けた。





駅前まで歩いていき、チェーン店のハンバーガー屋さんへ。

夜ご飯はこれで好きな物を食べてと言って、くれた。





お母さんとの贅沢は、いつもこのチェーン店のハンバーガー屋さんだった。

だから今日も迷わずこのハンバーガー屋さんに入る。





店員さんに注文を聞かれ、1番お安いハンバーガーを3つ注文した。

それをテイクアウトし、楽しみにしてボロッボロのアパートに帰った。





そして、インターフォンを鳴らした。

隣の部屋の、インターフォンを鳴らした。





1回で出てこなかったので・・・もう1回押す。





それでも出なかったので、家に帰ろうとした時・・・






鍵が開き、扉が開いた・・・。







前髪と眼鏡で表情は見えなかったけど、それでも言う。








「高校の入学式では可愛い制服も着てないし、私は中学の体育着を部屋着にしてるの。

性格も・・・今日から変わった。

言いたいことは言うようになった。

きっと、性格も良くないけど・・・私の“友達”になって欲しい。」







さっきテイクアウトしたハンバーガーを1つ、渡す。







「贅沢はこのチェーン店のハンバーガーで喜んでるくらい、うちは貧乏で。

お父さんもいなくてお母さんは足を引きずってる。

私もこんな格好で性格も良くないけど、私と“友達”になって欲しい。」






こんなこと、初めて誰かに言うから緊張もした。

でも、それ以上に私はこの人と友達になりたかった。

この人の友達として認めて貰いたかった。







「私の名前は、幸子。幸満つる子で、幸子。

友達になって、“イチ”。

私の友達になって、“イチ”。」











「ミツ、これも。

ここからここまで。」




イチに次々と資料を渡され、今日もイチのノートパソコンに言われた通り入力していくけど・・・




「早いって!もっと次の指示遅くして!!」




高校の授業が始まり、私は扶養範囲内でバイトを始めた。

そして・・・“バイト”ではないけど、お小遣いとしてイチの作業を手伝っている。




“友達”になってくれて、ハンバーガーを受け取ってくれた。

でも、その後すぐに部屋に戻ってしまって。

バッタリ会った時は話してくれるけど、部屋には入れてくれないし、私の家にも入らない。




理由を聞いたら、“高校生の女の子を家に入れられない”という理由だった。

なので、すぐにお母さんにお願いをしてイチに部屋に入れて貰うよう、言って貰った。




イチは全く乗り気ではなかったけど、数日間帰ってこなかったかと思ったら、急に私を部屋に入れた。





それからは、こんな感じでたまに・・・イチのノートパソコンに数字や記号、文章を言われた通りに入力している。




「予想する。次に起こること、次に打つ内容、それらを予想する。

そしたら、今より速くなる。

目だけじゃなく、頭も動かす。」




「どんな天才!?

私は凡人だからそんなこと出来ないから!

それに、分かったけど私は絶対に理数系じゃない!!」




打ちながらも文句を言う。

そんな私をイチは面白そうに笑った。




「でも、どんどん速くなる。

家だけじゃなく、連れて行きたいくらいに。」




「どこに?」




「研究室。」




そんな言葉に、私は手を止めることなく聞く。




「仕事してるんじゃん。」




「僕はまだ学生。」




イチは23歳なのに、まだ学生らしい。

浪人とか留年もあるから、そういうことがあるのは分かる。




「女子高生の手も借りたいくらいだったから、感謝している。」




「私もバイト以外は家事くらいだし、イチと遊べるなら楽しいし。」




タイピングしながら答えると、イチは面白そうな声で笑っていた。




「後で部屋の掃除と洗濯もやってあげる。」




「・・・小遣い渡します。」




「それはこっちだけでいいよ。

掃除と洗濯は友達としてやってあげる。」

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