4
入学式を終え、家に帰る。
家に帰ってから、すぐに中学の時の体育着に着替えた。
それから家事をしたり、翌日以降の高校の準備をした。
少し暗くなってから、お母さんが朝にくれた500円玉を握り締め家の扉を開けた。
駅前まで歩いていき、チェーン店のハンバーガー屋さんへ。
夜ご飯はこれで好きな物を食べてと言って、くれた。
お母さんとの贅沢は、いつもこのチェーン店のハンバーガー屋さんだった。
だから今日も迷わずこのハンバーガー屋さんに入る。
店員さんに注文を聞かれ、1番お安いハンバーガーを3つ注文した。
それをテイクアウトし、楽しみにしてボロッボロのアパートに帰った。
そして、インターフォンを鳴らした。
隣の部屋の、インターフォンを鳴らした。
1回で出てこなかったので・・・もう1回押す。
それでも出なかったので、家に帰ろうとした時・・・
鍵が開き、扉が開いた・・・。
前髪と眼鏡で表情は見えなかったけど、それでも言う。
「高校の入学式では可愛い制服も着てないし、私は中学の体育着を部屋着にしてるの。
性格も・・・今日から変わった。
言いたいことは言うようになった。
きっと、性格も良くないけど・・・私の“友達”になって欲しい。」
さっきテイクアウトしたハンバーガーを1つ、渡す。
「贅沢はこのチェーン店のハンバーガーで喜んでるくらい、うちは貧乏で。
お父さんもいなくてお母さんは足を引きずってる。
私もこんな格好で性格も良くないけど、私と“友達”になって欲しい。」
こんなこと、初めて誰かに言うから緊張もした。
でも、それ以上に私はこの人と友達になりたかった。
この人の友達として認めて貰いたかった。
「私の名前は、幸子。幸満つる子で、幸子。
友達になって、“イチ”。
私の友達になって、“イチ”。」
*
「ミツ、これも。
ここからここまで。」
イチに次々と資料を渡され、今日もイチのノートパソコンに言われた通り入力していくけど・・・
「早いって!もっと次の指示遅くして!!」
高校の授業が始まり、私は扶養範囲内でバイトを始めた。
そして・・・“バイト”ではないけど、お小遣いとしてイチの作業を手伝っている。
“友達”になってくれて、ハンバーガーを受け取ってくれた。
でも、その後すぐに部屋に戻ってしまって。
バッタリ会った時は話してくれるけど、部屋には入れてくれないし、私の家にも入らない。
理由を聞いたら、“高校生の女の子を家に入れられない”という理由だった。
なので、すぐにお母さんにお願いをしてイチに部屋に入れて貰うよう、言って貰った。
イチは全く乗り気ではなかったけど、数日間帰ってこなかったかと思ったら、急に私を部屋に入れた。
それからは、こんな感じでたまに・・・イチのノートパソコンに数字や記号、文章を言われた通りに入力している。
「予想する。次に起こること、次に打つ内容、それらを予想する。
そしたら、今より速くなる。
目だけじゃなく、頭も動かす。」
「どんな天才!?
私は凡人だからそんなこと出来ないから!
それに、分かったけど私は絶対に理数系じゃない!!」
打ちながらも文句を言う。
そんな私をイチは面白そうに笑った。
「でも、どんどん速くなる。
家だけじゃなく、連れて行きたいくらいに。」
「どこに?」
「研究室。」
そんな言葉に、私は手を止めることなく聞く。
「仕事してるんじゃん。」
「僕はまだ学生。」
イチは23歳なのに、まだ学生らしい。
浪人とか留年もあるから、そういうことがあるのは分かる。
「女子高生の手も借りたいくらいだったから、感謝している。」
「私もバイト以外は家事くらいだし、イチと遊べるなら楽しいし。」
タイピングしながら答えると、イチは面白そうな声で笑っていた。
「後で部屋の掃除と洗濯もやってあげる。」
「・・・小遣い渡します。」
「それはこっちだけでいいよ。
掃除と洗濯は友達としてやってあげる。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます