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ほぼ無理矢理入った“博士”の部屋の中。
ボロッボロのアパートの中、“博士”の部屋の中は足の踏み場もなかった。
ゴミではないけど、とにかく本や紙まみれ。
壁にも紙が沢山貼られていて、そこには数字や記号が沢山書いてある。
“博士”はその上を歩いていくけど、私はなるべく踏まないように歩いた。
1DKの部屋の中は、少し大きめの机とベッドだけがある。
本や紙だらけの中、博士はベッドの上に鞄を置いた。
ベッドの上だけは綺麗に整えられていて・・・
そして、その上に・・・
その上に・・・
「それ、何買ったの?」
なんと、婚約指輪や結婚指輪で1番有名で1番高いお店の紙袋が置いてある。
「キミには関係ありません。」
「それはそうだけど、気になるじゃない。」
私が答えると、博士はその紙袋を・・・
なんと、ゴミ箱に捨てた。
「捨てるの!?」
「はい。」
「そんな勿体ないことしないでよ。」
慌てて、ゴミ箱からその紙袋を取り出し・・・中を覗いてみる。
「見るわよ?」
博士は何も言わず、ヨレヨレのスーツのまま、私に背を向けベッドに横になった。
私は紙袋から小さな箱を取り出す。
これは、指輪の箱。
開けてみると、驚いた・・・。
大きなダイヤの指輪、それも中心のダイヤだけでなくリングの所にも全体にダイヤがついている。
これだと、恐らく400万円以上の物・・・。
そんな指輪が、働いていないという“博士”の家にあった。
こんなボロッボロのアパートの1室、ボロボロでヨレヨレの男が、持っていた。
「これ、どうしたのよ?
“博士”が買ったの?」
博士は何も言わず、布団を掛けてしまった。
「貰ったの?」
何も答えず、私に背中を向けたまま・・・。
このとんでもなく高いであろう指輪を、また見下ろす。
蓋を閉め、紙袋に入れ直した。
そして、それをまたゴミ箱に捨てる。
「彼女、いたのね・・・。」
手に持っていたビニール袋と、抱えていた大きなクマのぬいぐるみを床に・・・紙や本の上に置いた。
そして、ベッドに背を向け横になる“博士”の横に・・・ゆっくりと片膝をのせる・・・。
「慰めてあげるわよ、私が。」
“博士”は、正攻法では落とせない・・・。
だって、普通の男ではないから・・・。
確実に落としたいけど、正攻法では落とせそうにない・・・。
ゴミ箱に入った紙袋を見る・・・。
それから、また“博士”を・・・見下ろす。
布団にくるまり、私に背を向け横になる“博士”を、呼ぶ・・・
「“はじめ”さん、私が慰めてあげる・・・。」
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