第二十一話 名は体を
昨日は美咲と互いに離れていた間、何をしていたかとかを話した。
消されてしまったようなのでハルカ達の連絡先を教えておいた。みんなも喜ぶだろう。
まさかこんなところでサクラと会うだなんて。
未来の小隊員達もいい子そうだったし、昨日の顔合わせは実に素晴らしいものだった。
さて、そんな浮かれ気分も昨日まで。成宮副司令から今日の指示が出ている。
『体育館に向かうように』との事だ。
今日から本格的な訓練が始まるので、担当してくれる小隊の人とはそこで会うことになるだろう。
昨日までは成宮副司令から指示を貰っていたが、今日からは担当小隊の人に貰うことになる。
任務関係以外のやり取りも成宮副司令としていたので、もうできないとなると少し寂しくはある。
■■■
体育館前に着いた。中からは数人、人の気配を感じる。
扉は開いていたので「失礼します」と声をかけ入る。
中には三人。
「おお、来たか」
「おはようございます。浦和 賢太郎候補生です。よろしくお願いします」
俺はこの人達を知っている。
この人達は東都で最も有名な防蟲官と言っても過言では無いだろう。
「妾は
石動小隊長。身長百四十センチほど。理亜よりほんのちょっと大きいくらい。黒く長い髪をストレートに落としている。年齢は確か二十二歳だったか。
特徴的な口調だ。
「我は
黒井一曹。身長百六十センチほど。紫紺のショートヘア。前髪で片目が隠れている。年齢は
ちなみに、本名は
真面目な場ではちゃんと黒井 愛を名乗る。
「私は
蛍原二曹。身長百六十五センチほど。赤茶色の髪をポニーテールにしている。年齢は十八歳。
声が大きく、年下で後輩の俺相手でも敬語を崩さない真面目な人だ。
「残りはもう一人の方……理亜を見ておる」
石動小隊長の言うところによると、この小隊では俺と理亜の教育を担当するみたいだ。ただ、俺よりも少し早く入隊した理亜はある程度先に訓練を積んでいるので、俺が理亜に追いつくまで別でやるらしい。
ひとつ事前に言っておこう。
……残りのメンバーも含めて、この小隊はキャラが濃い!
隊長の石動三尉から特徴だけを簡潔にまとめて記す。
のじゃロリ(合法)!
猫娘!
宇宙電波受信系!
ポンコツ自称クール!
ゆるふわ天然鬼畜!
厨二病風!
後輩系猪突猛進敬語わんこ!
実は、この人達は動画サイト『ジパング』にて『
元々新入隊員の時、緊張を解すために埼玉基地公式チャンネルにて広報の手伝いをしたことが始まり。
それぞれのキャラの立ちっぷりに瞬く間に人気が出て、専用のチャンネルを持つまでになった。
当然あのキャラも動画用に作ったものでは無く、入隊時からあんなんだったらしい。すごいね。
「それにしても、賢太郎か……いい名だな」
「ありがとうございます」
黒井一曹に唐突に名前を褒められた。俺は俺の名前が好きなので褒められると嬉しい。好感度爆上がり。
「特に『太郎』がいい」
なにやら『太郎』を気に入ってくれたようだ。個人的には『賢』の方が好きだが。
「いやもちろん『賢』もいいと思うぞ?」
そうだろうとも。賢さの極地こと俺にぴったりな名前だ。名は体を表す。
「私もいい名前だと思います! 『賢』はなんか……賢そうだし『太郎』もいい感じです!」
ありがとうございます。叡智マンこと俺にふさわしい名前だ。名は体を表す。
「なあ、姫もそう思うだろう?」
会話に混ざらず、少し離れた所でなにやらゴソゴソしていた石動小隊長に声を掛ける黒井一曹。
「うぇっ!? ……そうじゃな、確かに賢そうな名前じゃな……」
その通り。なはたいっ。
唐突に話題を振られ驚く石動小隊長だが、話は聞いていたようだ。
多分俺の訓練の準備をしてくれているんだろうに。申し訳ない。
「あっ! 小隊長私と同じ感想ですね!」
蛍原二曹にはそんな気ないんだろうが、感受性を否定された気持ちになった石動小隊長は「ぐぬぬ……」って唸っていた。
まあ『賢』の文字から賢そう以外の感想は難しいよね……。
「ところで私の名前はどう思う?」
急に俺の名前を褒めだしたのはこの話題に持っていきたかったからだろうか。
勝手に
「そうですね。愛と夢に溢れた素敵な名前だと思います」
「そうだろうとも!」
嬉しそうにしている。名前を褒められるのはやっぱり嬉しいよね。
「私はどうでしょうか?」
「綺麗な名前ですね」
「綺麗だなんてそんな……」
「妾は?」
「お姫様みたいな石動小隊長に良くお似合いかと」
「そうじゃろうとも」
なんだこの雑な褒め合いは。
「うむ。という訳で賢太郎と呼んで良いか?」
どういうわけ?
もちろん良いけども。
「あっ。じゃあ私は……ケンくん! いいですか?」
「妾も賢太郎で良いかの?」
いいですとも。
「特別に我のことは愛夢と呼んで良いぞ」
「私も茜でいいですよ!」
先輩を下の名前で呼ぶのは少し抵抗があるが、相手が良いって言うのなら気にせずにいこう。
「妾はそうじゃな……」
そう言ってイタズラ思いついた様な表情で笑う石動小隊長。
「姫様と呼べ」
なるほど……。
即座に
「御意のままに。姫様」
「えっ」
愛夢一曹が続いて片膝をつく。
「姫様……」
「お主まで……!」
茜二曹が平伏する。
「姫様ぁーー!」
「ちょっ、声がでかいわ!」
みんなで姫様に頭を下げる。
「「「ははーっ」」」
「わかった! 姫でも小隊長でも好きに呼んで良いから! はよ頭をあげんか! 誰かに見られたら勘違いされるじゃろ!」
姫様呼びを要求したのは別に勘違いではないと思いますが?
■■■
『ジパング』
動画共有プラットフォーム。ウェブサイト版とアプリ版がある。
個人端末には最初からアプリ版が入っている。
『個人端末』
小学四年生で国から配られる。それまで授業で扱いなどを学ぶ。
国に配られるものは少し性能が悪く、より良い性能のものを購入し国に登録している者も多い。
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