第7話 夜中ゲームしていると、たまにドアのほうが気になるあの現象はなに?
僕は冒険者の見習いとしていろいろなことを学んだ。相場のことをアミラに教えてもらい、魔物の解体の仕方や薬草の品質分けなどをこなしていた。
特に魔物の解体や薬草の仕分け方についてはすじがいいとベテランの人に褒められた。剣術や魔法のように僕自身は覚えてないけど、僕の体が覚えているみたいでなんとなくわかった。けど、魔物の解体のリーダーのおっさんは騙されてなければ今頃家を買えてたんだ、と口癖のように言ってきたのはなぜなんだろうか?
今日は魔法について教わる日だったので少し気分が高揚していた。確かに母から学んだが記憶があやふやだしもう一度教わることは大事だと思った。
「よーし、今日は魔法の訓練の時間だぞー。やる必要ねえってやつは訓練所でいつものしとけーー!!」
そう言って教官は僕たち見習い冒険者を集める。トームたちは訓練所のほうへ向かっていった。さっき教官が言った通り、魔法が使えるようになったり、魔法の才能がなかったものは受けなくていいそうだ。
「んじゃ始めるか!!今日は初めてのやつが何人かいるから基礎から始めんぞー。まず、魔法ってのはみんなが知っている通り火・水・風・土・光・闇の基本6魔法と固有魔法に分けられる。固有魔法は基本6属性以外の魔法が使えるやつのことを言う。こういうのは生まれ持ったやつしか使えん。自分だけの魔法といったら聞こえはいいが固有魔法が使えるとほかの魔法が使えないし、同じ魔法を持っているやつが少なくて独学でやっていくしかないから成功しないやつのほうが多いな!!」
「え~、でもSランクの魔法使いはみんな固有魔法だって聞いたよ」
「ああ!!『幻影』や『影絵』のことか。まあ、特殊な例だな。あいつがSランクになるまで固有魔法もちがSランクになることなんてなかったからな」
固有魔法か。確かに僕にも憧れていた時期があった感じがするけど一度記憶のなくなった僕では正直よくわかんない。ただ、固有魔法をみんなに認めてもらうってことは自分を認めてくれるってことと同じ意味だし嬉しいと思う。
「固有魔法はいいんだ。持ってそうなやついねぇし、俺も教えらんねぇかな!!基本魔法の説明していくぞ」
基本魔法は教官が言っていた通り、火・水・風・土・光・闇の6種の魔法のことを言う。人間族つまり僕たちは全部の魔法を使えることができるが適正がないとうまく魔法を使えない。例えば、火魔法なら火種を出せる、水魔法なら両手いっぱいに出せる。これが適正のある人だと火魔法なら大きい火柱を立てることができるし、水魔法なら雨だって降らせるそうだ。
魔法の適正は髪の毛の色や目の色でわかるらしく、火魔法適正がある僕は赤色の目をしているし風魔法の適正があるトームは薄い緑の髪の毛と目をしている。基本色が濃いほうが適正が高いようだが薄い色でも強い魔法と使えるらしいし、指標の一つにしかならないようだ。あ、金色は適正とかないみたい、基本の色だとか。
「魔法を操る才能があるのは圧倒的に女が多いな。男はどうやら攻撃を回避しながら細かい操作をするっつうことが苦手みてぇでな。女の魔法使いでBランクとかになると男爵から王族、大商人まで選びたい放題らしいぞ」
それを聞いて回りを見る、冒険者は村のはみ出し者がよくなる職業らしいが教官の話を聞いている子の半分以上が女の子だった。戦闘訓練のほとんどは男だったので冒険者見習いの女の子がこんなにいるなんて思わなかった。
「魔法を使えるやつは3通りの仕事がある。まずは、魔物の駆除だな。パーティーの中に入って後ろから魔法を打つ役割がある。こいつはどんなタイプの魔法使いでも需要があるし人気だな。次に魔法を使った公共事業だな、雨を降らしたり、道路を作ったり、ゴミを燃やしたりするやつだ。魔法の展開が遅いが規模がでかいタイプのやつが人気だな。最後に魔道具を作る仕事だが器用な奴の仕事になるがこの街には魔法学校があるからな。そういう仕事はみんな学生がもってちまう」
「じゃあ、実習始めるぞ!!初心者はこっちで基礎から始めるぞ。他の奴はわからん事あったら聞け」
僕は教官の周りに集まる。僕以外も何人かいるが男の子のほとんどは仕方なく来ているような感じがする。逆に女の子は魔法に興味があるようで目を輝かせているのがわかる。僕は記憶がなくなる前は母に魔法を教えてもらい、使うこともができたらしいが今はできなくなっている。彼はそういった記憶を持っているようだが、僕には魔法を使う感覚は思い出せない。
「お、これで全員か。それじゃあ魔法の使い方を教えよう。魔法を使うには自分の中にある魔力を感じることが大事だ。感じることができない奴は才能がなく魔法を使えないってことになるな。なあに、安心しろ。魔法が使えなくたってBランクまで上がるやつも結構な数いるからな。役割分担だ役割分担」
そういって教官はニカっと笑う。
「じゃあ、これから俺がお前らに魔力を流すから感じ取れたら手を上げるように!!」
教官はそれから黙って一人ずつ新人たちの型に手を当てていく。その後、少しして頭に耳が生えた女の子が手を上げる。
「ハイにゃ!!感じれたにゃ!!いえーーい!!これで私も玉の輿にゃ!!お金ガッポガッポにゃ!!」
「おお!!獣人か!!しかもその耳は猫人族。狐人や狸人じゃない種族が魔法の適性があるのは珍しいな」
猫人?の女の子は嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。それにしてもすごいな、教官の腰以上の高さを余裕で超えてるぞ。猫人というのはみんなウサギみたいに飛べるのだろうか?
やっと僕の番になったようで教官が僕の肩に触れる。んん?何かが体に入っていきている感覚が感じられる。これが魔力なのか?だんだんくすぐったくなってきた。
「おお!!お前も感じられたか!!まあ、そんだけ魔力あって感じられなかったら宝の持ち腐れってやつだったがよかったな!!」
教官は僕の肩をすごい勢いで叩いてくる。魔力を感じたことで自分の魔力がどれだけあるかが確認できた。普通の人の基準がわからないけど半分上位の魔物、吸血鬼が半分混じっているせいかその大きな力を感じることが出来た。半吸血鬼になって初めて感動したかもしれない。
「今日はこの五人か!!じゃあ次のステップに入るぞ!!他は近くのベテランに頼んで魔力を感じる訓練をするか解散するぞ!!」
周りを見ると猫人の女の子を含む五人が残った。すげぇ、僕以外全員女の子だ。やっぱり教官の言っていた通り女の子の方が才能があるみたい。
「じゃあ、次のステップに行くぞ!!自分の魔力を感じられるようになったら魔力を自分の利き手に持っていくように。利き手から小さい火が出てくると想像してから『火種』と言ってみろ」
『火種』はわかる。初級魔法でと呼ばれるもので『火種』は自分の手から火種を作りだす魔法のことだ。初級魔法は6種の魔法のうち火と水、風と土の魔法で、魔力消費が少なくい代わりに属性に適性がなくてもできる魔法だ。ちょっとでも魔法を使える人はこの初級魔法を使って生活している。
『初級魔法 火種』
どうやら言ってみるだけではダメなようで火はでてこない。まず、魔力を込めることが大切なのだろう。ただ、これがなかなか難しい…。
ふと、トームとアミラのほうを見てみる。トームが剣と纏っている風で冒険者や教官を吹き飛ばしているのが見えた。…あれは参考にしないほうがいいだろう。
まず最初に体の中にある魔力を感じてみることにした。これはさっき魔力を感じることができたので簡単にできた。そこからこの魔力を集めようとしてみる。
少しずつだけど集まってきた。発動しようとするとまだ足りないと感じる。発動できるまで少し待ってから発動してみる。
『初級魔法 火種』
ぼうっと小さな火が僕の手の上に現れた。僕の手を動かすと火も僕の手をついてきて面白い。ふと、猫人の女の子のほうを見ると魔力をうまく集められないのか腕をぐるぐる回らせ何やら叫んでいた。あ、目が合った。
「にゃにゃ!!みゃーより後だったのにもうできたのか!?あっつ!!」
猫人さんは僕に近づいてきたとたん、僕の火種を触って悶絶している。そりゃ、初級であっても火なんだから熱いよ…。
「ん?おお!!やっぱ獣人はとりあえずできないときは体を動かすからなぁ。大丈夫か?」
教官が寄ってきて猫人さんを手当てしていく。猫人さんは懲りないようで教官にお礼を言った後立ち上がりまた、腕を回し始めた。
「お前は火種ができたようだな。お前は目が赤いからな次は火魔法を使えるようになるぞ。いいかコツは想像することだ。まあ、極論を言ってしまえば詠唱なんていらないんだほらこんな風に想像して魔力を込めれば魔法は発動できる」
教官は僕の前に何も言わずに『火種』を出す。
「俺たちがなんで詠唱するかって言うのは想像しやすくしているからだ。例えば、リンゴといわれるとその形と色と味が想像できるだろ?戦闘中はごちゃごちゃ考えている暇ないからなぁ、だからすぐ出せるように予め言葉を決めておくんだよ。『ファイアーボール』なんてどうだ?火の玉を打ち出すだけだが、狙いやすくて当たればそこら辺の雑魚は一発だぞ」
僕は訓練でしか実践を経験していなかったけど、これ魔法打つ暇いつあるんだろう、と思っていたからありがたい。
『火魔法 ファイアーボール』
僕の手の上からさっき出した火種より少し大きい火の玉が出てきた。
「あ!!危ない!!」
僕の出した『ファイアーボール』がそのままトームとところに進んでいく。トームは僕の声に気が付くと振り返り、剣で『ファイアーボール』を切った。化け物である。
「おおっ!!リード!!もうお前魔法使えるようになったのか!!そんなとこいないでこっちこいよ!!模擬線しようぜ!!」
まるで何もなかったかのように話を進めるトームにびっくりしていると教官に話しかけられた。
「おお!!もう魔法が習得できたのか!!じゃあ今から自由にしていいぞー正直魔法とか人それぞれ過ぎて触りしか教えられないんだわ。魔法使いとしてやっていくならあとは自分で何とかするか魔法学園に入学するかってかんじだな」
「わかった、ありがとう」
さっきからトームが呼んでいるのがうるさいので教官の話をそこそこにトームの方へ向かう。猫人さんがめっちゃ睨んでて怖い…。
「お!!やっときたかリード!!さあ模擬戦やろうぜ!!」
トームは訓練用の剣を構える。僕も同じように剣を構える。初心者の僕がわかるぐらい圧倒的な差が開けている。だから今回は魔法を使って戦おうと思う。トームもまさか覚えたてで不完全な魔法を使ってくるとは思うまい。
「では、始め!!」
アミラの合図でお互いが突撃していく。トームは大技で威力の高い剣術を好み、僕は針に糸を縫うような剣術を好む。冒険者としてやっていくとしたら威力の高い剣術の方が人気だけど僕の身体はどうしても威力の高い攻撃というものを放てる気がしないということで進んだ道である。
技としても完成されつつあるトームの一撃を僕は受けきれない。そのため、トームの剣が肩から振り下ろされる前に後ろに引く。
トームの剣から風が伝わってくる。風魔法を使っていないにも関わらず油断すると腰から崩れ落ちるほどの威力がある。
剣を何とか回避できた僕は未熟ながら突きを放つ。しかしながら、トームはそれを織り込み済みかのように返す刀で攻撃をはじく。はじかれた剣をしっかり握り右からの横なぎを放つ。
トームは剣を盾にして守った後、その剣を押し返して僕の体制を崩す。左手に魔力が集まる。
『火魔法 ファイアーボール』
僕は押し出された右腕から崩れる。直前に左腕にためた魔力を放ち、火球を繰り出した。トームはすでに半歩後ろに下がっており、満面の笑みを浮かべながら放たれた火球を切る。
僕はそのまま倒れ、喉元に剣を置かれ降参する。
「今日は一段とすごかったぞ!!魔法を土壇場で使ってくるとは思わなかった!!」
「じゃあ、なんで回避ってか、切れるんだよ…」
「う~ん、勘!!でもおやじは相手の魔力の集まりから何となくの威力がわかるって言ってたぞ!!」
この子供にして父である。リードはトームの手を借り立ち上がる。その顔は不満そうだ。
「そんじゃ、もう一回やるか!!」
日が暮れるまでトームとアミラと僕は模擬戦を続ける。二人がかりでもトームには一本も取れなかったのだった。
補足 リード君の記憶について
記憶を失っているというが言語など意味記憶は体が覚えている。エピソード記憶は夢を通してしか覚えることが出来ない。毎日過去の夢を見るので断片的には覚えていることもあるが、そんなに覚えていることはない。
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