第6話 大丈夫です!は大丈夫なときと大丈夫じゃないときの半々だ
早朝、僕はトームとアミラとともに冒険者ギルドに訪れた。
冒険者ギルドは昨日の昼に来た時より人が集まっており、鎧をまとっている人、ローブを羽織っている人、何も武器を持っていない普通の人などでごった返していた。
「リードは朝来るのは初めてだったな!!まあ、あんな感じで昨日来た依頼が今日の朝に発表されてるんだ!!俺も知らなかったから初めての時はびっくりしてけどな!!」
驚いていた僕にトームはそう説明してくれた。中には高そうな武器や鎧を持っている人やまだ駆け出しなのか最低限の装備しか持っていない人がいる。
そんな人達を脇目にし、ギルドの奥に行くと扉を開け、屋外訓練場に向かった。
「教官おはようございます!!こいつ初めてのリードっていう奴です!!」
トームは訓練場出てすぐにいた左腕がなくなっているおじさんに話しかけた。
「ああ!!てめぇがリードか!!噂になってんぞ。俺は新人冒険者の訓練を任せられているザックだ、みんなから教官なんて呼ばれてる。よろしくな」
「リードです、よろしくお願いします」
いつの間にかアミラとトームはほかの駆け出し冒険者に混ざり訓練を開始していた。
「今日は冒険者ギルドの説明になる。説明終わったらあいつらに混ざるなり見学したりしな」
「冒険者ギルドってのは大きく分けると主に三種類の仕事がある。一番言われてんのは魔物駆除の仕事だな。んで、次に魔法を使った仕事、最後に日雇いの仕事だな」
そういいながら教官は詳しいことを説明してくれた。魔物とは体内に魔石を持つ動物の総称であり、魔石を食らうことで成長するといわれている。その毛皮や角などは上質で魔力が通りやすく魔道具や装備などによく使われるため高い需要を誇る。強さはギルドの評価と同じ、AからGまであり、Aより上ドラゴンなどはS級、規格外級となるらしい。
これまでは魔物の駆除は騎士団など領主の仕事だったけど、商人が皮をもっと綺麗に保存して欲しいとか、肉が美味しいから火魔法を使わないで欲しいなど色々文句を言ったこと。魔物は人がいないところは無限に沸いてくる、そのため、人が足りず、かといって戦争のための兵士も残しておかないといけないので全地域に人を割けないといった状況から、魔物を倒すための専業職、冒険者が生まれたらしい。
次に魔法を使った仕事は土魔法なら道路を整備するとか、水魔法なら畑に水をやるとか、の仕事のほかに魔道具を作る仕事もあるみたい。
最後に日雇いの仕事だけど、これは人が足りないときや商人の荷物下ろしやギルドでの解体作業など色々なものがあるらしい。なんでも、冒険者ギルドってやつは元々食い詰め者が町に来た時に仕事を紹介する組織だったらしく、名残りとして残っているそうな。
「まあ、こんな感じで一言に冒険者って言っても戦わねえやつはいる。お前さんは目を見る限り、火魔法使えんだろ?んじゃあ、3日にいっぺん町のゴミを燃やす仕事がるし、ここはダンジョン都市だから色んな商人が出入りする、その荷降ろしの作業だったり戦わねえ仕事なんてゴロゴロ転がってる。冒険者で戦えねえったって誰も笑わんから人生の振り方、この半年でつかみ取れよ」
教官はそう言ってくれたけど、たぶん、僕には戦い以外の道しかないと思う。昨日、みんなで雑魚寝したとき、みんなのことがおいしそうで仕方なかった。たぶんこの空腹は人間が一番身近で一番魔力に溢れているからだと思う。朝食とき魔物の肉を食べたらましになったし。
僕は半吸血鬼で本来吸血鬼っていうのは魔物だ。何かの衝動で人の血を吸ってみろ、僕は一瞬で魔物扱いされ毎日冒険者や騎士団に追われる日になる。この吸血衝動を抑えるために動物や魔物の血を吸えばいいのだが一番ばれないのは冒険者として自分が討伐した奴を吸うことだ。まあ、そのせいで僕はずっとソロで食っていかないといけなくなるのが確定しているが。ハア…
「次に冒険者としての評価だな。A~Gの7段階に分けられていて、評価は最初にもらった冒険者証、ギルドカードに書いている。評価が高いとギルドから実入りのいい依頼とか斡旋されるし、素材や魔石を売るとき少し高くしてもらえる。その他には、高い宿屋を安く利用できるとかあるな」
評価の仕方は大きく分けると二つあるらしい。一つは腕っぷしの強さで決まる通常ランクと信頼度などで決まる特殊ランクがあるらしい。
特殊ランクとはパーティー行動、護衛、討伐、薬草採取、日雇い、〇〇魔法使い、など力の強さ以外で評価されるもので冒険者に依頼をするときはこっちを重要視する人が多い。このランクは人間としての信頼も加算される。依頼の連続達成とか持ってきた薬草の質とかで決まるらしい。
D級以上になると家を買って永住できる権利や魔物討伐を専門としている騎士団に入ることが出来るらしい。冒険者にとってはとても魅力的でそれを目指すために頑張る人が多いようだ。
みんながみんな好きで冒険者になったわけじゃない。冒険者という職業は基本的に町の部外者の扱いであり、息苦しい時があるみたいだ。そんな人が結婚などしたら子育ては大変になるし、仕事中に亡くなっても家族の面倒を見るものがいない。家があれば宿を追い出されて町中をさまようことはないし、騎士団に入ると衣食住を領主や国が負担してれる。しかも、騎士団に入った冒険者が死亡すると家族に少なくない金額の見舞金が支給される。
まあ、僕は騎士団に入れないんだけどね。
「ランクはどうやって上がるの?」
「Dまではギルド側が勝手に上げてくれるぞ。魔物はその強さに応じて魔石が大きくなるからな。その大きさを図ってどれぐらいの強さかわかるって仕掛けよ。特殊ランクの方は商人がいい仕事をすると感謝状とか送ってくれるからそれから判断する方法。他にも、ギルドにいる特殊ランクが上位のやつが素材の優劣を仕分けてることがあるからそこから、評価されるってわけだな」
「Dからは?」
「Dからは一つか二つ上のランクの奴と依頼を受けてしっかり遂行できるかなどの試験があるな。あと、通常ランクのDでもある程度信頼度がいる。強いけど性格がやべえ奴と近所づきあいなんてしたくないからな」
「受付のやつも言ってたと思うがこれからお前さんは半年間の修行期間に入る。午後は戦闘や魔法の訓練で、午後からギルドで雑用させる。雑用つっても魔物の解体とか、魔石の計算、薬草とかの品質分けの手伝い、町に出て商人たちの荷下ろしや店番なんかをしていく」
雑用でやっておきたいことの3つを教えてもらった。
一つ目はギルド内の雑用はしっかりやればやるだけ信頼度が上がる、そして、仕事から技術を学びとれば冒険者として自立したときに儲けの違いが出てくるらしい。魔物の解体ができることによって魔物の値段が高い部分だけ現地で解体して、荷物を減らすことができるとか、薬草の品質をある程度見分けることができれば買取にプラスされるとかあるのだそうだ。
二つ目と三つ目は町での仕事の関連だった。二つ目は相場を知ること。相場というのはよくわからなかったが不作だったりすると小麦とかの値段が高くなるそうで、逆に豊作だと安くなるそうだ。だいたい、いつも売っている値段を確認しないと料金を騙されて買ってしまうのだそうだ。一度騙されるとこいつは騙しやすいと噂が広がり、ある人なんかは20年間普通より値段が高い状態でものを買っていたという。その人の口癖は「騙されてなかったら今頃自分の家を持っていた。」らしい。
三つ目は商人との顔の取次である。商人はいつでも腕の立つもの信頼できるものを探している。信頼できるものを護衛として雇いたいし、荷運びの仕事は盗むやつもいる。客として取引する場合は値段をまけてくれることもあるし高めに買い取ってくれる、専属で雇ってくれる場合がある。
「お前さんはいまいちわかんねぇって感じがあるな」
「相場とかよくわかんないよ」
「まあ、村育ちだとそうなるわな。まあ、経験するとわかってくるさ。中には永遠にわかんねぇってやつがある。そっちにいるトームのやつがそうだ」
トームの名前を出しながら訓練場の広場を見る。そこにはトームが初心者から冒険者の若手、中には中年のベテランとも呼べる人たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げしている様子が見られた。
「あいつは風の傭兵団の若手ナンバー1ってやつでな
どうしても実力があっても頭の悪い奴は出てくると教官は言う。そうゆうやつは研修期間に交渉などをできる人を探す期間にさせるそうだ。トームはアミラのことを相棒と言っていたが、戦闘面でのことではなく冒険者として生活するための相棒だという。
「まあ、だいたいは話したが何か質問はあるか?」
「これ、どれぐらいの価値になるの?」
僕は相場の話から自分の持っている金貨の価値が気になった。金貨はなんでも買えるらしいが、この金貨は帝国と呼ばれるものでこの国のものではないからだ。
「これは帝国金貨か。メイドスは帝国とも近いし大体同じ価値になってるな。ただ、最近の帝国はちょっときな臭い感じがあるからさっさとギルドの受付でこっちの金貨に変えたほうがいいぜ」
教官がいうには銅貨1枚で一日分の小麦が買える。銀貨1枚で魔道具が使われている宿に一日泊まれる。金貨が家を買えるぐらいらしい。銅貨十枚で銀貨1枚、銀貨一枚で金貨1枚の価値があって最高は白金貨と呼ばれ金貨100枚と同じ価値があるそうだ。
「ほかの質問はいいみたいだな。じゃ、お前もトームに揉まれてこい!!」
教官に言われてトームのほうに木の剣を持ちながら行いった。
「お!!リード、やっと説明終わったか!!じゃあ模擬戦やるぞ!!」
そういって僕に笑顔を向けるトームの下にはこれまでやられたであろう被害者たちが地を這うようにトームから離れて行っていた。それを見てなんだかトームのことを僕より化け物なんじゃないかと思ってしまう。
負けた。ボコボコにされた。吸血鬼の自然治癒能力が高いため僕は無駄にタフネスがあるがその分長い防戦一方の試合だった。観戦者も最初はお、タフネスある子だねみたいな感じで見てたけど、徐々に顔が引きつり始めて、青い顔しながら後ろでポーションの準備がされていたほどであった。
「いやあすまんな!!リードがなかなか倒れないもんだからこっちも熱が入っちまってよ!!倒れるまでやれってのがおやじの教えなんだわ」
そういって平謝りするトーム。アミラはそのトームに白い目を向けていたが。
「いいよ、僕も勉強になったし」
「おう!!じゃあこれからちょっとの間になるけど模擬戦の相手よろしくな!!」
確かにトームとの訓練はしんどいけど、勉強になった。けど、毎日は勘弁してほしいところだ。
こうして僕の冒険者(見習い)生活は始まった。
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