第3話

「うわぁ。なかなか広い」


 結局レンタルルームに入ることになった。


「おい。来たら教えろよ」


『了解。哨戒班以外に、近場にいるフリーな味方も呼んどく』


「ん?」


 おっと、彼女。


「いや、なんでもない。ここに誰か来たら教えろよって、通信で録音先に」


「あ、そなの」


 嘘は言っていない。来るのは化物なんだけども。


「ふわあ」


 彼女がソファにもたれかかる。


 あ。


 これ。


 彼女寝るな。寝るぞこれ。ほら。うとうとしてきた。さん、にい、いち。


「おい」


『はい』


「部屋の内部見てるか?」


『見てないし録音もしてない』


「見て録音してくれ」


『なんで?』


「彼女の寝顔がかわいい」


『と言いつつ本当は?』


「外で殺し合いだよ。殺し合い」


 化物は殺すと感情が飛び散るので、人を殺すより何倍も精神が磨耗する。


『いや、それが』


「なんだ。手に負えないやつでも来てんのか」


『何も来てない』


「は?」


 彼女がコンテナに入ってるのに。化物が来ない。


「ちょっと待て。そんなことがあるか。RCC(※化物かどうかを測る指標)確認してみろ」


『それが、なんか、数値が。おかしくて。反転してる』


 反転。


「もしかして」


『うん。中の感情が外に出てない。街の外縁にあるのと同じ、強固な防御壁みたくなってる』


 設計ミスかよ。

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