第2話

 レンタルルームの、オーナーを任されている。任務柄、避けられなかったので引き受けていた。


 この街には、化物が出る。人の感情を食う化物が。それをおびきよせるための、釣り餌みたいなものだった。コンテナに人が入ると、その中の感情を求めて化物が寄ってくる。それを殺す。任務完了。


 とは、ならなかった。結局化物は釣り餌の匂いに感付くのか、何も寄ってこなかった。ついでに人も寄ってこない。今では、哨戒班の休憩所代わりになっていた。


 壁にでかでかと、この部屋は録音録画されています、なんて書いてあるけど。録音録画されているのは部屋内部ではなく、部屋そのものの置かれている環境だった。化物が来るかどうかをリアルタイムで観視している。


 そんなレンタルルームに、彼女が興味を持ってしまった。面倒このうえない。


 彼女は、化物に食われやすい感情の持ち主だった。擁するに、感情そのものの質が高い。そんな彼女をコンテナに入れれば、それは、化物が来るだろう。


 それが面倒。


 彼女と化物が対面しないように、こうやって自分が隣にいる。通常の任務に参加できないので、レンタルルームのオーナーなんてやらされているわけで。そんな彼女がコンテナに入るのは、本末転倒というわけで。


『防御体制は一応整えてるぞ』


 うるせえなさっきから通信が。しかし彼女が隣にいるので応答もできない。


「あなたはその部屋で何してたの?」


 おっ、と。

 しまった。通信聴きながら話してたから、彼女との会話に精彩を欠いたか。


「いや、まあ、色々」


 やばいやばい。彼女がコンテナに興味を持ってしまう。


『ちなみにコンテナは空いてる。哨戒班は裏で待機してる』


「え、何?」


「いや、なにも」


 ああもう。通信切ってやろうか。いや通信切ると化物の情報入ってこないから切れないんだけども。


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