第20話 少々お待ちください
テニスウェア選び……それも自分のじゃない。
サイズに関しては取り寄せれば良いので、考えるべきはデザインのみ。
彼女にはどんな服が似合うだろう。素材が良いから、どんな服でも似合うだろうけど……
明るい色が良いと思う。ピンクとか黄色とか……いや、青系の寒色も似合うか? 落ち着いた大人の雰囲気が増幅されて……
迷う……迷ってしまう。ここまで判断を迷うことがあっただろうか。絶対に失敗できないという緊張感が……
「そ、そんなに思いつめなくても……」
「そんなこと言われても……」あのヒーローに着てもらう服なのだ。「10時間くらい時間をいただければ……」
「……それでも良いけど……どうせ暇だし」受け入れられるとは思っていなかった。「悩んでも、そんなに変わらないと思うけどなぁ……」
それは少年も思う。
なにかを好きになる理由なんて、基本的には後付なのだ。最初に一目惚れして、あれこれ理由をつけていくだけなのだ。
最初に良いと思ったものが、結局良いもの。それが選択というものだと思う。
「とりあえず私の選んだ服なんだけど……」
「それにします」
「食い気味」
「キミは何を着ても似合うだろうけどね」そんなことはないけれど。「カッコいいし……筋肉質だし。鍛えてるのが伝わるから……もっと、ワイルドな服でも似合いそう」
ワイルドなテニスウェアってどんなものだろう……袖が引きちぎられているのだろうか……
ともあれ、
「ありがとうございます」しっかりと服を受け取って、「大切にします」
「そんな重く受け止めなくても……軽く受け取ってくれたらいいよ。というか、キミのお金で用意した服なのに……」
こんなに良いものをもらってしまったら、少年としても火がついてしまう。
必ず
☆
12時間後。
「私が悪かったからさぁ……」
「も、もう少し……500着まで絞りましたから……」
「そんなに候補作らなくていいから……」
「いえ……きっと完璧な一着を選んでみせますから……少々お待ちください……」
「……」
お許しを得たので、心ゆくまで選ぶことにする。
といっても早く選ばないといけないことは自覚しているので……
最終的に32時間が経過して、ようやく究極の一着を選ぶことに成功したのだった。
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