第8話 にゅう……ぬぉん……
憧れのお姉さんが酒浸りになってゴミ屋敷に住んでいる。
受け入れがたい現状だが、これが現実なのだろう。
ともあれ、こんな不衛生な場所に彼女をおいていく訳にはいかない。少年は吐瀉物を処理してから、
彼女の呼吸は、とても荒かった。寝汗も酷くて、とても休めているようには見えない。
宿に戻って、部屋を二人部屋に変えてもらった。もう一つ一人部屋を使わせてもらおうかとも思ったが、今の
彼女を部屋のベッドに寝かせて、少年は窓から空を見上げた。
10年間憧れた、
だけれど……なにか理由があったのだろう。正義感に溢れた真っ直ぐな
……
しばらくして、酷いいびきが聞こえてきた。呼吸も乱れているし……彼女がまともに眠れているようには思えなかった。
……今、彼女に話を聞ける状態じゃないよな……
……明日の朝、
☆
翌日。ルームサービスの朝食が届いて、それを受け取る。
カーテンを開けて、日光を室内に入れた。
さて
「ん……」ゴソゴソと動きながら、
謎の言語を発している。寝起きが悪いのか、二日酔いなのか……
「おはようございます」
「……んー……」
「えーっと……昨日の夜、酔っ払って倒れていた
「昨日の……夜……?」どうやら記憶がないらしい。とはいえ、昨日よりは話が通じそうだ。「それはご迷惑を……」
「いえいえ……10年前に助けられてますからね。恩返しですよ」
「10年前……?」首を傾げながら、
「はい。僕の宿泊してる宿に、連れてきました」少年は頭を下げて、「すいません。無許可で勝手なことをしました」「いや……大丈夫……」
まだ
「宿代は……?」
「サービスしてくれましたよ」もちろん嘘である。「ですので、料金は僕一人分で変わってません。ご心配なく」
「ん……そうなんだ……」
目を覚ましたは良いが、まだまだ体調が悪そうだった。
声もかすれている。酷くやつれているし、なにより覇気がない。10年前に感じた覇気がない。
「じゃあ……お世話になりました……」
「あ……ルームサービスの朝食があるので、一緒に食べませんか?」
「ルームサービス……? いや……いいよ」
「せっかく用意してもらいましたし……食べましょうよ」
「ん……」
それから
サンドイッチと、コーンスープ。少し量が少なく見えるが、極めて一般的な朝食だろう。
「……」
グーッと、
「……お言葉に甘えても、良いかな……?」
「もちろん」
というわけで、2人での朝食。
少しばかり、少年は緊張していた。憧れの女性と2人きりなのだ。10年憧れ続けた人が目の前にいるのだ。理性を保つだけで精一杯である。
「いただきます……」食前のあいさつをして、
「それはよか――」
良かった、と言いかけて固まってしまった。
なんとも……痛々しい姿だった。
一体彼女の身に……何があったのだろう……?
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