第4話 カッコいい男に
あれから……少年の頭の中には常に
自分のピンチを颯爽と救ってくれたヒーロー。
気がつけば、そのヒーローのことを考えていた。自分が恋をしているのだと自覚するのに、時間はかからなかった。
なんとかして、彼女にもう一度会えないか。しかし、なんの用もなく探し回るのも気が引ける。
というわけで、お礼を用意した。少ないお小遣いで、クッキーを買った。量がないのに高いクッキーだった。
そうして、はじめて彼女と出会った土手に行く。
時刻は前回彼女と会ったときと同じ。学校への登校時間。
土手の道をゆっくりと歩きながら、彼女の姿を探す。
しかし、なかなか見つからない。今日はもうダメか、と諦めかけた瞬間だった。
「あ……」見つけた。あの後ろ姿は、間違いなく彼女――
考える間もなく、少年は
「……?」
まだ顔のあざは治りきってないようだった。いたたまれなくなって、
「は、はい……前は、ありがとうございました……」深々と頭を下げてから、少年はクッキーを差し出す。「これ……お礼に、良かったら……」
「お礼……? そんなお礼言われるようなことしてないよ」
「そんなこと……」酔っ払いに絡まれた少年を助けてくれたヒーローだ。「僕は……その……お礼がしたくて……」
「んー……」
「でも……」
少年としては、どうしても御礼の品を渡したい。
逆に
だけれど……御礼の品は渡さないといけない。そうじゃないと、気がすまない。
「わかりました……お礼は諦めます……」
「あ……ごめんね。キミの気持ちは嬉しいんだけど……」
「これは、プレゼントです」
「プレ……プレゼント?」
「はい」舞い上がって、少年の口からとんでもない言葉が飛び出す。「僕は……あなたが好きです……!」
「……へ……?」
完全に想定外の言葉だったようで、一瞬遅れて
そして想定外だったのは少年も同じだった。まさか自分がこんなことを口走るとは、思っていなかった。
ともあれ、言ってしまったものは仕方がない。
「だから……これはお礼じゃなくて、プレゼントです。好きな人に、プレゼントしたいんです」
「あー……その、ね……」
「いません……!」完全にヒートアップしてしまっている。「あなたが一番です……!」
「お、おう……情熱的だね……」
それも当然のことだ。少年は小学生で、
下手をすれば、10歳ほど年齢差がある。そんな相手からの、突然のプロポーズ。
だけれど、しょうがない。もう少年の人生で
「だ、ダメですか……?」なんだか自分の幼さに腹が立って、泣きそうになってしまった。「僕は……まだ子供だけど……あなたが好きです。恋人に、なりたいです」
「んー……」
「……?」
「キミが将来、おっきくなって……カッコいい男に成長していたら、恋人になってあげよう」
「え……」しばらくして、
「カッコよくなったらな」
「は、はい……!」
そんな少年の、淡い初恋。子供の頃に出会って、カッコよく育つと約束する。
通常なら、そのまま別れてそれっきりだろう。
それから彼は、努力を積み重ねた。肉体的にも精神的にも、頭脳的にもカッコいい男になるために。
だけれど……少年は
再会した
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