第12話 値段は知りません
「さて今日は何をしましょう。僕はあなたのためなら、なんでもします」
「んー……」少年に甘えることに、少し慣れてきた
「承知しました。どんなジュースを用意しましょうか」
「そうだねぇ……」
「すぐに用意します」
というわけで、少し電話をかける。
しばらくして、インターホンが鳴った。そして現れた黒スーツ姿の男性が数人、段ボール箱を持って現れた。
「ありがとうございます」
お礼を言って、少年はダンボールを部屋の中に運び込んだ。
「どうぞ。ご用意しました」
「……じょ、冗談……冗談だったのに……」なぜか泣きそうになっている
「世界中のジュースが飲みたい、というのは本心からの言葉でしょう?」
「……まぁ、飲みたかったのは確かだけど……」
「今の僕にはその力があるので」ジュースくらいならお安い御用だ。「世界各国の評判の良いジュースを用意しました。いくらでもどうぞ」
「あ、ありがとう……」
とんでもなく戸惑っている
少年からすれば、朝飯前だ。ちょっと知り合いの富豪に電話をかけたら、簡単に用意してくれた。持つべきものは知り合いの富豪である。
「こちらはどうでしょうか。情報によると、アメリカのオレンジジュースだとか」
「ほ、本当に良いの……? すごく……すごくお高いんじゃ……」
「値段は知りません。いくらでも払えますから」
この世に存在するものなら、大抵は買える。
ゴッホの絵画がほしいというのなら、何個でも買おう。そのためにお金を用意してきたのだ。
なんにせよ、
「どうぞ」
「……」
「喜んでもらえて、よかったです」
内心ホッとしていた。マズイと言われたらどうしようかと思っていた。
「……でも、ここまで用意しなくても……」
「そうでしょうか……
「……」
「ですから、10年前に助けてもらって……」
「ごめんね……その10年前……あんまり覚えてない」
ちょっとばかりショックな発言だったが、まぁしょうがない。
「キミと恋人になるとか……そんな約束をしたのはなんとなく覚えてるけど……なんで、キミはそんなに私に惚れてくれたの? 私、なにかした?」
「はい」
まだ小学生だった少年のヒーロー像になり、人生を変えるくらいには。
「せっかくですし、お話しましょうか」飲みものを飲みながら思い出話をするのも悪くない。「10年前の……僕の初恋の話です」
少年と
少年にとっては重大な出来事だが、他の人にとってはおそらくどうでもいい話。興味がない人は聞き流して良い話。
「あれは10年前……川沿いの土手で起きた話です」
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