第4話

 あの死体は温井音生の双子の弟のものだった。


 スパイダーに選ばれたのは三郎だった。仙崎壮一はつくば山中の監獄に入れられた。

 

 2028年。小早川健一(山田涼介似)が、久しぶりに両親の元へ帰ってくる。アメリカ人のフリオニールに育てられ、暗殺者としての修行を積んだ彼には、自身の母方の従姉妹である英莉の暗殺という命令が下されている。


 ある夜、何者かがつくば市にある英莉の館に忍び入る。英莉は、室内に残されたビー玉の片割れを見て、幼なじみだった健一が自分の命を狙っているのだと悟る。


 かつて、つくば帝王の妹であり、妾腹の平太の養母だった保奈美(吉田羊似)の計らいによりフィアンセとなった健一と英莉は、その証としてビー玉を半分ずつ託された。しかし、辺見家と松永家が同盟を結ぶため、2人の結婚は破談となった。健一に身の危険が迫っていると気づいた保奈美は、親友のフリオニールに彼女を預けたのである。


 健一の伯父で英莉の叔父の光長(勝村政信似)は、朝廷寄りの献言をしたことで英莉の怒りを買い、国境へ左遷されることになる。健一の父・三郎が護送していくが、その道中、松永家が送りこんだ刺客たちに襲われる。光長は生き埋めにされかけ、三郎らも縛りあげられるが、その場を通りかかったウーバーイーツの青年(渡辺大知似)が、助けに現れる。しかし衆寡敵せずライダーも追い詰められたところに健一がかけつけ、刺客たちを撃退する。変わり果てた健一に、三郎は、フリオニールに預けたのは誤りではなかったかと後悔を口にする。


 別れも告げずに去った健一は、筑波山の中腹で仮面の刺客・村田(鹿賀丈史似)に襲われ手傷を負う。健一は、後を追ってきたライダーに連れ戻され、治療を受ける。青年はかつて、神奈川の工場で働いていたが派遣切りに遭って、故郷のつくばに戻って来た。


 英莉の恋人である飛鳥が不意に廊下で倒れ込む。英莉の館に忍び入っていた健一は、呪術に苦しむ飛鳥を救う。健一は、慌てて駆けつけた英莉から飛鳥の子を身籠ったことを告げ、その場をあとにする。その後、英莉は、飛鳥の担任の妻鹿めが(三浦洋一似、さすらい刑事旅情編に出てた)が呪術師を雇い、飛鳥を苦しめようとしたのだと知る。呪術がかかった飛鳥の友人は射殺され、英莉は妻鹿を太刀で斬り捨てようとするが、とっさに英莉をかばう飛鳥を前にして思いとどまる。


 フリオニールの元を訪れた健一は、英莉暗殺の指令を遂行できなかったと告げる。「英莉を殺害しても、後継ぎはまだ幼く混乱は必至であるから」という健一に、フリオニールは暗殺者としての技術は完成しながらも情を捨てられなかったのだとなじる。健一とフリオニールは一戦を交えるが、健一の剣術の腕前は、師匠であるフリオニールに引けを取らないものとなっている。健一は剣を収め、その場を立ち去る。フリオニールは彼の後ろ姿を呆然と見つめる。


 健一は、下妻へ向かうライダーらと共に、霧深い草原の彼方へと姿を消すのだった。人間たちの些細な営みなど知らぬかのように、山々は自若として変わることはないのであった。

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