或は蛇足の事

「それで、結局お前はなにもやってないどころか迷惑かけてただけってことでいいのか?」


「なんてこと言うんですか!私だって今回の『怪人赤マント』の事を探偵さんに連絡したりしてました!その連絡に気付くのが全部終わった後だったきく菖蒲あやめさんより数億倍マシですぅー」


「なんだよそのありそうでない名前は。俺だってわざと無視してたわけじゃないんだぞ?そりゃ整体で治療してもらってるときに携帯鳴らすわけにはいかないだろ」


「なんでそんなタイミングで体労わってんですか。探偵さんの腰の前に私たちの命が危なかったんですけど」


「最近本当にきつくなってきてな……。このままぎっくり腰になったら俺は死ぬかもしれん」


「30でそれだとこの先、探偵さんは生きていけるんですか?怪異に巻き込まれるより健康上の理由で死にそうですね」


「うるせえよ。これでも1週間に2回は周辺を散歩するようにしてるし、気が向いたらラジオ体操とかもやってたりするんだぞ?」


「健康に気遣う市井のお爺ちゃんより薄い健康志向ですね……。もうこれは、本気でタバコを没収するしかないですね」


「お、お前、俺の数少ない楽しみを奪おうってのか!?それがなくなるともうサボ子さんしか日々の楽しみがなくなるだろ!」


「探偵さんの毎日が灰色通り越してブラックアウトしそうなことはわかりました。あと、ミニサボテンに変な名前つけるのやめてください」


「好き放題言いやがって!別にいいだろ、俺が買ったんだからどんな名前つけたって!それに植物だってちゃんと話しかけたり音楽聞かせてあげると大きく成長するんだぞ」


「ああ、だからこの前サボテンの上に音楽プレーヤーに刺さったイヤホンが乗ってたんですか……。私はてっきり、『サボテンがスピーカーに見える奇病』にかかったのかと思いました」


「お前が俺をどう見ているのかよくわかった。ハァ――こんなことなら見舞いなんて行くんじゃなかった」


「んー?なにか聞こえましたねー?心配で心配で仕方なかった、とっても“大切”で“可愛く”て“頼もしい”助手の無事を、いち早く確認するために病院にすっ飛んできた探偵さんが何か言ってますねー?」


「ナ、ナンデソノコトヲ」


「え、本当にとんできたんですか?」


「ッ、これは罠か!?」


「ねぇ、ほ、ほんとにすぐ来てくれたんですか?病院を調べて、お父さんや爺がいるかもしれないのに最速で来てくれたんですか!?」


「知らねえ、そんな事実はナイ。俺の中にはそんなことはなかった」


「あったんですね!?移動費すらケチる探偵さんが私の為に最速で来てくれたんですね!!?」


「うるせえ知るか!バーカバーカ」


「反論が小学生になってますよ!ちょっと待ってください、あっ逃げるなコラ!」


 そんな日常の余談。

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