第31話 南の島と水着とお着替え天才少女

「あっついですね…」

開口一番、そんな言葉が出る


魔法学校の手配してくれた船に乗って半日ほど

辿り着いた南の島、アナナス島

今は、この島で学生さんが寝泊まりする宿舎…

その庭から海岸線を眺めている

赤いサンゴ礁、白い砂浜、照り付ける太陽!

まさに南国といった感じで、学生さんならテンション上がるんだろうなぁ

…私は今、厚手の服を買ったことを後悔しています

だってあの時は、こんな暑いとこ来るとは思わなかったし!

まず一着だけでも自分の服を買わなきゃってなったらっ…


「確かにあっついなぁ…

 古代は冬場に来るリゾート地だったらしいで、ここ」

にっ、と笑うアマミさん

太陽に照らされた笑顔がかわいい

今回は、彼女が一緒に来てくれている

何か個人的な用事があるって言ってたけど…


「そんな暑がりお姉ちゃんのために用意しました!」

暑くても元気なテラスちゃん

背中に背負ったリュックサックから、何かを取り出す


「え、ええええええ?!」

彼女の取り出したそれは、白いセパレートタイプの水着…いわゆるビキニだった


「いや、暑いとは言いましたけど…!

 水着で歩いてたらヘンタイさんじゃないですか?!」

「ここでは魔法学校のみんなも水着だったよ、とにかく暑いから…」

「ほ、ホントですか~?」

「せやで」

「…し、信じますよ……?」

そういう作法なら仕方がない

郷に入っては郷に従えとも言うし


「って、布地少なくないですかこれ?!」

広げてみると、まあ、面積の少ない事

これ以上面積を下げると下品になる、ギリギリのラインじゃないかな…


「うう、私のためにこんなお金使っちゃって…」

「大丈夫だよ!布地少ないから安かった!」

「ホントですか?!」

何か騙されてる気が…

いやまあ、暑いのは事実だし、考えないようにしよう…


「でも、じゃあテラスちゃんはどうするんです?」

テラスちゃんに水着をいっぱい買えるほど、お金があるとは思えない


「学校指定の水着があるから、それで…」

「テラスっち~」

「!」

唐突にアマミさんが怖い声を出して、テラスちゃんを抱きかかえた


「自分だけお楽しみは許さへんで~」

「や、やだー!マミりん離してー!」

「あの…一体何です…?」

「うちもテラスっち用に水着買ったんや!それ着てもらおう思うてな!」

「は、はぁ…」

「うちはこの子着替えさせるから

 ウズメさんもどっか適当な部屋に入って着替えて来いや」

「なんだかわからないけど、わかりました」

お邪魔してはいけない雰囲気を感じたので、そそくさと宿舎に入る


「…これ、着ちゃうのかぁ…」

手渡された水着を見て、改めて思う

やっぱりテラスちゃんってドスケベちゃんだよね…



水着に着替えて、さっき話してた場所に戻ってくる

…うん、涼しい!

肌の露出を考えなければ、確かにこの方が過ごしやすい

考えなければ…

うわー!やっぱり恥ずかしいよー!

この前下着になった時は、もうそれどころじゃなかったから気にならなかったけど

余裕がある今、露出してると恥ずかしくなってくる

これを二人に見られて…


と、そんな、自分の恰好の恥ずかしさに悶々としているところに

別の衝撃がやってきた


「あ…お姉ちゃん…そ、その…」

「ええ~~~~~っ?!」

フリルのいっぱいついた、オレンジ色の水着を着てきたテラスちゃん

そのあまりのかわいさに、つい叫んでしまう


「な、何ですこの、かわいいテラスちゃん?!」

「うう…」

いつもとは逆に、真っ赤になってもじもじしている彼女

その仕草が、さらにかわいさを引き立てているとも知らずに…


「ええやろ~?テラスっちはもっとこう、かわいい系で攻めるべきやと思うねん」

全面的に同意します、アマミさん!

なんていうかこう、すごく守ってあげたくなるような、そんな気持ちになってくる


「あ、あたしはもっとこう、カッコいいお姉さんを目指してるの!」

背伸びをしたがる少女

そして、背伸びができてしまった少女にとって

こんなかわいい恰好に、ちょっと違和感があるのだろう

でも…


「私はそれ、いいと思うけどなぁ」

正面から抱きしめて、頭をなでなでする

私もテラスちゃんくらいの時は、いっぱいかわいがってもらったものだし

カッコいいお姉さんは、もうちょっと後からでもいいよね


「はぅ…っ」

湯気が出そうなくらい、さらに顔の赤みが増すテラスちゃん


「お姉ちゃんがそう言うなら、しょ…しょうがないかな…」

目線を横にそらし、もじもじしながらそう答える

もー、かわいいいいっ


「つか、マミりんだけ恥ずかしがらないのずるい~」

アマミさんの水着は、そんなに露出も多くなく、大人しい感じの薄緑色のセパレート

こう、私もお二人にお洋服の一つでもプレゼントできたらよかったんだけど

貧乏ですみません…


「ウチは実家で散々着せ替えされてたからな、もう動じへんで…」

「あ、遠い目をしている」

「悲しみの連鎖が続いていたんですね…」

貴族さんの家だと、持ってる服の量もすごそうだし

何時間も拘束されるんだろうなぁ…


「その連鎖、お姉ちゃんで断ち切ろう」

「それってつまり、私が恥ずかしい着せ替えをされ続けるって事では…?」

「いや、だってお姉ちゃんのえっ…かわいい姿もっと見たいし!」

本音出るの早いなぁ!

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