第23話 おじさんとの再会

「美味しそう…お姉ちゃん、このパフェ食べてこうよパフェ」

冒険者カードを受け取った帰り道

通りかかった喫茶店の前で、テラスちゃんが急に立ち止まる

赤緑茶白

色とりどりの果物とクリームがふんだんに使われた、豪華なパフェのイラスト

店先に描かれたそれが妙に美味しそうで、食べたくてたまらなくなってくる

これ描いた人は天才じゃなかろうか…

お値段は…760G

…ラグナロク近くのお店と比べると安いかも


「う…食べたいですけどぉ…

 今の私、ほとんどお金持って無いんですよ」

別荘の食糧買い出しを手伝うという名目でもらった、お駄賃2000G

今の私の全財産…慎重に使わないと


そうやって、パフェの値段にためらっていたところに

誰かかが走ってくる音がする


「ウズメっ!」

え…この声は…?!

驚いて振り返ると、大柄なお髭のおじさんが、私の側に近寄ってきていた


「よかった…生きてたか!」

「お、おじさん?!」

私の肩に両手を置き、安堵の表情を浮かべる彼

今のラグナロクで唯一、私が親しかった冒険者だ


「その手を離せ!」

けど、そんな事情を知る由もなく

突然現れた男性に、テラスちゃんは自分の魔法の杖を突きつけて威嚇する


「何者か知らないけど、怪しいヤツ…!お姉ちゃんに近寄るな!」

「テラスちゃん待って!この人はラグナロクの…」

「お姉ちゃんを突き落としたヤツの仲間…?!」

「そ、そうじゃなくて…」

とりあえずテラスちゃんを落ち着けないと…


「炎の天才魔法少女…噂には聞いたことあったが…

 ウズメを救ったのはお前か?」

「違うよ!あたしがお姉ちゃんに助けられたんだよ!」

「…うん?」

おじさんの顔に疑問が浮かぶ


「い、色々ありまして…二人で協力して脱出したと言いますか…」

「…いや、過程はいい…

 ともかく生き残ってくれたんだ…よかった」

「……」

今のラグナロクでも、私を心配してくれる人がいる

それは私のやってきたことが無駄ではなかったという、救いだった


「おじさんは、私を落としたお姫様とは関係ないですよ」

「…そうなの?」

「少しだけ、今、ラグナロクがどうなってるのか、お話したいんだけど…」

テラスちゃんは、しばらくむーっとほっぺを膨らませて、何やら考えていたが

その考えがまとまると、おじさんを指さして、話し始めた


「おっちゃん」

「…なんだ?」

「そこのパフェ奢ってくれる?そしたら話をするのもやぶさかではないよ」

「て、テラスちゃん…」

考えた末の妥協ライン、そこなの?!


「お、おう…いいぞ」

おじさん…ホントすみません




喫茶店に入る

少し狭いけど、綺麗に掃除されていて、いい感じのお店だった

窓際の席に3人で座り、注文を頼む

私たちはともかく、おじさんもパフェを注文したのは意外だった


「最近、煙草をやめたんだが…口寂しくなってな

 代わりに甘いものが食いたくなるんだよ」

とのこと

注文したパフェを待ちながら、話をする


おじさんは、私が洞窟の落とし穴に勝手に落ちた、というお姫様の話を

不審に思って、調査してくれてたらしい


深層まで潜って、私の燃えた服を見つけたが、火を吐くモンスターはいなかったので

火属性パーティに助けられた可能性を考えて、近くの街…

ここで私を探していたと


私も、おじさんに今までの事を話す

お姫様に落とされて、テラスちゃんと出会って、二人で頑張って脱出して…


「…そうか…そんな事になってたのか」

「お姫様も、きっと誤解をしてるだけなんです

 …でも、もう疲れてしまって」

恩返しをしたい人は、もうこの世にはいない

あの頃のラグナロクにはもう戻らない

…それを理解できなかった…したくなかった


「私が戻ってこじれるよりは、後を任せた方がいいと思ったんです

 彼女の方が、きっと今のギルドを上手くまとめられると」

今の私よりは意欲はたっぷりあるはずだし…


「…上手くいくかは、五分五分だな」

おじさんは、指で髭をいじりながら、難しそうな顔をする


「元々、リーダーと王族の仲が、あまり上手くいってねえんだ」

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