第24話 クリームパフェと冒険の約束
「『ラグナロクのリーダー』『国の王女』
お互い相手の肩書が欲しい、政略結婚に近い婚約
…王族の方は意外と、お熱を上げてたようだが…
浮気してるとか、無茶な誤解したのも、それが一因だ」
「そんな…」
「心配すんな、たとえギルドが無くなったとしても
その後のメンバーの世話は、俺が見てやるから」
そう言って、おじさんは笑顔で胸を張った
「こう見えて、ラグナロクに来る前は、色んな職を練り歩いてたからな
転職のプロなんだぜ、俺は」
「それはどんな職でも長続きしなかったってだけじゃない…?」
「う、うっせえな?!」
ちょっとクスっとする
おかあさんも『ダイエットに5回も成功したダイエットのプロよ!』
とか言ってたなぁ…
「ギルドメンバーが路頭に迷うのは心配だろうが
今の話だと、ギルド自体には、もう未練は無いんだろう?」
「…はい」
皮肉だけれど…お姫様に落とされた事で、吹っ切れたのだと思う
「じゃ、じゃあ…もしギルドが無くなって、みなさんの再就職先が
決まらないようでしたら…」
おじさんから紙とペンを借りて、ラグナロクと取引のあるお店やギルドを書いていく
ここの人たちに、私からの紹介と言えば、無下に扱われることは無いと思う
「お待たせしました~、カラフルデラックスイリュージョンパフェ3つで…」
パフェを運んできたウエイトレスさんが
テーブルで突然書き物を始めた私を見てぎょっとしている
うう、すみません…しばらく見逃してください…
ウエイトレスさんは、パフェを3つ置いて、そそくさと戻っていった
「でも、おじさんだって大変なのにこんなこと…」
私とギルドの都合に巻き込んでしまって
「気にすんな、後できっちり返してもらうさ」
「あ、そ、そうですよね!冒険者なんですから、報酬が無いと…」
「お前らが二十歳になったら、一緒にパーティを組んで、冒険に行こう
そんで、それが終わったら宴会するんだ…その時の一杯が報酬だ
苦労を共にした仲間との一杯は、とてつもなく美味いんだぜ」
おじさんの語るそれは、私の憧れだった
冒険に行って、帰って来て…成果があった時も失敗した時も
おとうさん、おかあさんたちはいつも宴会をしていた
その時のみんなは本当に楽しそうで…
「お酒の話はわかんないけど…
おっちゃんは悪いヤツでもない気がしてきた」
「まあ、俺もギルドに入りたての頃は、荒れてたけどな」
「もう少し、ラグナロクにおっちゃんみたいな人が多かったら
お姉ちゃんも…」
でも、そうはならなかった…それはもう仕方ない事だと思う
「『タカマガハラ』ギルドマスター、テラス殿
どうか、ウズメの事…よろしく頼む」
おじさんがテーブル越しに、深々と頭を下げる
「こいつは他人の事になると無茶しがちだ
致命的なことをしでかさないように…見守ってやってほしい」
「あ、その、おじさん…そんな…」
私のために、頭まで下げなくても…!
「…承知しました
マスターとして、彼女を見守っていくとお約束します」
幼いながらも威厳のある声で、そう返すテラスちゃん
それがあまりにも意外過ぎて、思わず
「え…テラスちゃんが敬語を?!」
と、とても失礼な事を言ってしまう
「あ、あたしだって、たまには敬語使うよぉ」
「そ、そうだよね…ごめんね」
テラスちゃんは真っ赤に照れながら、むー、と不満を表している
…すごくかわいい
「ところで」
ちょっと気まずくなった雰囲気に、おじさんからの助け舟が
「パフェが崩れかかってるんだが、そろそろ食べた方が良くないか?」
「あ!ほ、ホントだよ!」
「急いで頂きましょう!」
書き物をしてる間に、結構時間たってたんだ…
折角の美味しそうなパフェなのにもったいない
3人ともかきこむように、クリームと果物を口に入れていく
…うん、美味しい!
果物の刺激のある甘さと、クリームの濃厚な甘さが交互に来ていくらでも食べれそう!
「む、お姉ちゃん、クリーム綺麗に食べるね…
口元に残ったりしてない」
「美味しいものは一欠けらも無駄にしませんよ」
「あたしは『ウズメお姉ちゃんの口元に残ったクリームを
手で取って自分の口に入れて、お姉ちゃんが真っ赤になる』って
シチュがやりたかったの!」
「ええええ、そんな事言われても…」
「こうなったら、まずあたしのクリームをお姉ちゃんにつけて…!」
「ちょ、ちょっと、それ何か違うんじゃないですか?!」
じゃれあう私たちを見て、笑顔になるおじさん
「そういや、さっき話してたけど、おっちゃんって冒険歴どれくらいなの?」
「んー…冒険歴自体は3年と短いが、その分濃い体験はしてきたぞ」
「あたし冒険の話とか聞きたい!」
「年取った親父の話は長いぞ?覚悟はいいか?」
「うん!」
テラスちゃんがそんなリクエストをしてしまったせいで
そこから、陽が沈みかけて解散するまで、おじさんの冒険話は続いた
お話はとても面白かったんだけど…お店の人の目が痛かった
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