第22話 憧れの冒険者カード

「じゃあ、二人の持ってるスキルを『見せて』もらうわね」

神官さんたちは、神様の力を借り、他人のスキルを見ることができる

それで見たスキルをギルドカードに書き込む訳だ


「えーと、「戦士」「探索者」「神官」「魔法使い」…全部0レベルね

 実戦は、もう少し鍛えてからがいいと思うわ…」

「で、ですよねー…」

学校に通うか、自分で特訓するか…

モンスターを倒してスキルポイント獲得、は…

テラスちゃんとパーティ組んでるし、できなくはないだろうけど

危ないから、せめて4大スキルのどれかは1Lvになってからにしたい


「何を伸ばすのがいいと思いますか?」

スキルを見れるおかげで、神官さんはよく人生相談を受けたりする

私にも何かアドバイスを…!


「そうね…『探索者』がいいと思うわ

 『探索者』には、そこそこの戦闘力と冒険知識が必要なのだけど

 冒険知識だけは、4Lv級にあるのよあなた…」

「……」

「普通の子だと思ったのに…びっくりよ」

…それはたぶん、おとうさんたちの話を、熱心に聞いてたから…


「自力で習得している技術の分、必要スキルポイントは下がるから

 探索者4Lvまでなら、通常の5割ほどのスキルポイントで上げれるわよ」

「!」

「おおお…ちょ、ちょっと希望が見えてきました…!

 ありがとうございます!」

特訓、頑張ろう…!


「それはそうと、なんか変わったユニークスキル持ってるわね…

 宴会芸(裸踊り)6Lvって」

「わー!」

忘れてたー!

これ見られるのが嫌で、教会から足が遠のいてたんだった…!


「…あ、ご、ごめんなさいね。初めて見るスキルだったから、つい…

 それに6Lvとか…一国を代表するレベルだし…」

スキルレベルで表される習熟度は

1が習いたて、2が普通、3が得意、4が一流

5が師匠、6が国民代表…ぐらいのイメージ


「国レベルの踊り…見たい……」

ゴクリ、と唾をのむ音がする


「ね、ねえ、ウズメさん…」

「やりませんよ?!」

「ダメなの?!なんなら代わりに、初めて行ったダンスパーティで

『タコが踊ってるよう』と言われた私の踊りも見せるわよ!?」

「そんなのどっちも恥ずかしいだけじゃないですかやだー!」

黒歴史を唐突に暴露されても困る…


「ふふふ、ウズメお姉ちゃんのダンスは滅多に見れないんだよ…!」

「その口ぶり…天才ちゃんは見たのね!ど、どうだったの?!」

「そりゃもうすごいの一言だよ…こう、ばいんばいんって…」

「ほ、ほおお…あれがそんなに…!」

「うう…ジロジロ見ないでくださいよぉ…」

わ…話題を変えよう話題を…


「え、えっとさ…

 テラスちゃんのユニークスキルってどんなのか、聞いていい?」

話題そらし…ではあるけど、パーティを組むんだし

ちゃんと聞いておきたかったのも事実だ


「太陽の力(パワーオブサン)だよ

 なんか、炎と光の魔法がばーって強くなる感じで」

そのスキル名を聞いて、私の中でピースがピタリとはまった気がした

太陽の力……


「ああ、だからテラスちゃんは、キラキラ輝いてるんだね」

私を暗闇から、明るいところに連れてきてくれた

太陽のようにまぶしく、明るい子


「……」

「天才ちゃん、顔赤いわよ」

「え?そそ、そんなことないよ?!

 ちょっと言われ慣れない台詞だったから、びっくりしただけなんだからね!」

シスターさんはそんなテラスちゃんを見てニコニコしている


「…天才ちゃんのギルドに、こんな普通そうな子が…?と思ったけど

 案外上手くやっていけるかもね」

彼女は上機嫌で、白い冒険者カードにすらすらと、見たスキルを記入していく


「えっと…ユニークスキル欄は

『宴会芸』『宴会芸(裸踊り)』のどっちにする?」

「え、『宴会芸』のみで…」

宴会芸だけでも恥ずかしいのに…裸踊りまで入れるのは…


「了解っと…できたわよー」

冒険者カードが手渡される

私には新品のカードが、テラスちゃんには書き直されたカードが


―――――――――――――――――

テラス タカマガハラ所属

魔法使い5Lv 太陽の力5Lv

(ウズメとパーティ中)

―――――――――――――――――

ウズメ タカマガハラ所属

探索者0Lv  宴会芸6Lv

(テラスとパーティ中)

―――――――――――――――――


偽造防止のために、魔力を紙に押し込めるマジックペンで書かれた文字

光に当てると虹色に輝くそれは、持っている者の心を高揚させる

内容自体は、本当に必要最低限なもののみ

しかしそれが、かえって重みを持って私の心に響く


「ほあー…」

私は色んな角度でカードを見て、色味の違いを楽しむ

ただただかっこいいっ…


「ウズメお姉ちゃん子供みたーい」

「うっ…い、いやでも見たいんですもん!」

「天才ちゃんも先週、ここ出たところの庭で、同じ事やってたじゃない」

「み、見てたの?!」

「大丈夫よ、結構みんなやってるからね」

おとうさんたちも、はじめはこうしたのかな…?って思うと

なんだか自然と笑みがこぼれてくる


「しかし…希望にあふれたいい顔してるわね

 やっぱり初心者はいいわねぇ…みんな冒険に夢を持ってる」

冒険に必要な才能を持って生まれてはこなかったけど…

でも…それでもいいんだ

私は、おとうさん、おかあさんたちに沢山の…大切なものをもらってる

それを胸に、冒険に飛び出すんだ


「悩みがあったらお姉さんに相談にいらっしゃい、できる範囲で聞いてあげるから」

「はいっ…ありがとうございます!」

「あたし、ウズメお姉ちゃんみたいに大きくなりたいんだけど

 どうしたらいいかなぁ?」

そう言ってテラスちゃんは、また胸をゆさゆさするジェスチャーをやってる

まず身長伸ばす方がいいと思うよ…?


「え…いや、その、そういう相談されても専門外なんだけど…」

「えへっ、じょーだんだよ♪」

「こ、こやつぅ~」

シスターさんは、テラスちゃんの頭を右腕に挟み込み

左手の拳で挟んだ頭をぐりぐりする


「あ、い、いたいっ?!ウズメお姉ちゃん助けてっ…」

「シスターさん、ど、どうかそのへんで…」

別れ際に、そんなじゃれあいを挟みつつ…

希望を手に、私たちは教会を後にするのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る